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草野正宗という怪物くんについて。
彼の美しく儚い声は僕の心をわしづかみにした。初めて聴いたのはロビンソン。ものすごい感動があったのかというとそうではありません。だけど、気がつけば、アルバム『ハチミツ』を一日中聴いていた。
正宗君は1967年生まれ。見た目はほとんど変わっていない気がする。髪型も体型も。彼のようになりたいと思ったことはそれほどないのだけれど、永遠の憧れではある。彼はあまりにも繊細で優しく、そのデリケートさ故に多くの名曲を生んでいる。
以前、風待ちミーティングという作詞家・松本隆氏の記念イベントがあり、そこで原田真二のタイムトラベルという曲を歌った動画を観たが、歌う前の彼の緊張は半端ではなかった。けど、曲のイントロが流れだすと人が変わったように堂々と歌いだした。要するに、多くの人前に出ることは正宗君にとってはものすごい苦手なのだけど、歌を歌うということにかんしては全くニュートラルな行為なのだろう。つまり、頑張って歌っているわけではないのだと思う。本当の意味で自分を楽しむとはこういうことを指すのではないか?そんな風に思った。