自虐の詩

自虐の詩のレビュー・評価・感想

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自虐の詩
10

映画・原作共に素晴らしい作品です。

こちらの作品は映画版を先に観ました。
序盤から阿部寛の演じるイサオが、ちゃぶ台をひたすらひっくり返しまくるところからはじまり、その後も働かず機嫌を損ねるたびにちゃぶ台をひっくり返し、またギャンブルや酒好きでありイサオの内縁の妻である幸江から金をせびるヒモで、幸江はこんなダメ男との不憫な生活を送っていて不幸であると感じました。中盤になると二人の過去や、幸江と同じ境遇である極貧家庭に育つ熊本さんという親友の存在が明らかになってきます。そこからイサオの印象やこの映画がただのコメディ映画ではないと思いました。
終盤に幸江が言った「幸や不幸はもういい どちらにも等しく価値がある 人生は明らかに意味がある」というセリフがあります。人それぞれ解釈が異なるだろうと思える言葉だと思います。私は人生というものには価値、意味はないのではないと思っています。でもそれは決してネガティブに考えているのではなく、生きている時間の中に無駄なことであるように感じることはあります。その時間から価値や意味などを見出さなくても、無駄だと感じている時間こそが人間らしくて愛しく感じられる日々であると思いました。
原作も読んでみたいと思い調べてみたところ、業田良家さんという漫画家の存在を初めて知りました。自虐の詩の原作が4コマ漫画であり、映画にはない細かいシーンにもイサオのさりげないやさしさがときおり描かれており、笑えて泣ける4コマ漫画はほかにはない作品ではないかと思います。