自虐の詩

自虐の詩

『自虐の詩』は1985年1月4・11日合併号から1990年8月2日号にかけて『週刊宝石』で連載された業田良家の4コマ漫画。当初は複数のシリーズがあるオムニバス形式だったが、人気のあった森田幸江と葉山イサオのやりとりを描く「幸江とイサオ」シリーズ一本化される。金をせびるイサオとそれに従う幸江という構図のギャグが中心だが、次第にドラマチックな展開が増えて「泣ける4コマ」として定番となる。
2007年10月27日には映画が公開。映画版では舞台が東京から大阪の下町に変更されている。

自虐の詩のレビュー・評価・感想

自虐の詩
10

映画・原作共に素晴らしい作品です。

こちらの作品は映画版を先に観ました。
序盤から阿部寛の演じるイサオが、ちゃぶ台をひたすらひっくり返しまくるところからはじまり、その後も働かず機嫌を損ねるたびにちゃぶ台をひっくり返し、またギャンブルや酒好きでありイサオの内縁の妻である幸江から金をせびるヒモで、幸江はこんなダメ男との不憫な生活を送っていて不幸であると感じました。中盤になると二人の過去や、幸江と同じ境遇である極貧家庭に育つ熊本さんという親友の存在が明らかになってきます。そこからイサオの印象やこの映画がただのコメディ映画ではないと思いました。
終盤に幸江が言った「幸や不幸はもういい どちらにも等しく価値がある 人生は明らかに意味がある」というセリフがあります。人それぞれ解釈が異なるだろうと思える言葉だと思います。私は人生というものには価値、意味はないのではないと思っています。でもそれは決してネガティブに考えているのではなく、生きている時間の中に無駄なことであるように感じることはあります。その時間から価値や意味などを見出さなくても、無駄だと感じている時間こそが人間らしくて愛しく感じられる日々であると思いました。
原作も読んでみたいと思い調べてみたところ、業田良家さんという漫画家の存在を初めて知りました。自虐の詩の原作が4コマ漫画であり、映画にはない細かいシーンにもイサオのさりげないやさしさがときおり描かれており、笑えて泣ける4コマ漫画はほかにはない作品ではないかと思います。