対話が生み出す生きることの答え
2017年公開のSFミステリー映画。
突如世界中に現れた宇宙船。搭乗する知的生命体の目的を聞き出すため、言語学者のルイーズが彼らとの対話に挑む物語が展開されていきます。
人間の業を、深く、繊細に描くことに定評のあるドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作。
壮大なスケールのSF作品になっていつつ、ゆったりと静かに進んでいく展開は、今作のテーマの1つとなっている"傷を癒す対話"のようにも感じられます。
知的生命体"ヘプタポッド"が扱う未知の言語や、作中で流れるモールス信号のような音楽など、ビジュアルやサウンドの両面で"対話"を表現しているのも注目したいポイント。
そうして描かれていく物語の結末は、あまりにも美しく衝撃的です。
見る人によっては美しく感じ、また、見る人によってはショックを受ける人もいるでしょう。
賛否の分かれるラストだと言えます。
それでも私が本作を素晴らしいと思う理由は、結末を見て感じたどの感情も、私たち人間でなければ感じ得ないものだというメッセージを体現している作品だからです。
この作品の終盤で明かされるある仕掛けは、私たち人類が言語を"話す"ことで理解できる生き物だということ、そしてそれによって"人生"が形成されていることを仄めかしてます。
生きることは、流れる時間の中で様々な感情に直面することだと言ってもいいでしょう。
正の感情、負の感情をどうとらえるか、その問いに1つの答えを出しているのが本作『メッセージ』だと感じます。時間のある方は、ぜひ続けて2回見てほしい。きっと、より美しく衝撃的な結末を感じられるでしょう。