スリー・ビルボード / Three Billboards Outside Ebbing, Missouri

『スリービルボード』とは、マーティンマクドナー監督によるアメリカの映画作品である。2017年11月にフォックス・サーチライト・ピクチャーズによって配給された。
ミズーリ州の架空の田舎町エビング。誰も通らないような寂れた道に3枚の広告板が並んでいる。そこを通りかかったミルドレッド・ヘイズという中年女性はあることを思いつき、その足で広告会社へ向かい、三つの看板を出す契約を結ぶ。
「娘はレイプされて焼け死んだ」、「いまだに犯人は捕まらない」、「どうして、ウィロビー署長?」。その広告が出されるまでは、街の人々はミルドレッドに同情していたが、ガン末期患者のウィロビー署長を町中が慕っていたため、町中にミルドレッドの敵は増えてしまう。しかし、そこまでしなければ警察は動かないと思っての母親としての行動だった。
ウィロビーはその意志を理解し、捜査に取り組むが、解決を待たずして病状は悪化し、自ら命を絶ってしまう。そのことにより、復讐の連鎖は繋がり始め、ミルドレッドと警察の意味のない怒りは増幅していき…。
本作品は2017年・第74回ヴェネチア国際映画祭のコンペティション部門に置いて、脚本賞を受賞した。第42回トロント国際映画祭では最高賞となる観客賞を受賞した。また、第90回アカデミー賞では、作品賞、脚本賞ほか5人がノミネートされ、主演女優賞にフランシスマクドーマンドが、助演男優賞にサムロックウェルが受賞している。

スリー・ビルボード / Three Billboards Outside Ebbing, Missouriのレビュー・評価・感想

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スリー・ビルボード / Three Billboards Outside Ebbing, Missouri
7

汚職・人種差別・性犯罪。様々な問題を描いたヒューマンドラマ

2017〜2018年、世界中の映画祭で様々な賞を受賞した「スリービルボード」。人間のいろんな側面を描いたヒューマンドラマです。
主人公のミッドウェルは少し偏屈な女性だったが、アメリカの片田舎で女手一つで二人の子供を育てていた。そんなある日、彼女の娘がレイプされ、最後は焼かれて殺されてしまう。数ヶ月が経っても犯人を捕まえられない地元の警察に対してミッドウェルは不信感を募らせる。彼女は、今はほとんど車が通らない寂れた道路に設置された広告看板(ビルボード)にその思いをぶつける。「娘はレイプされて焼かれた」「犯人はまだ捕まらない」「どうして?ウィロビー署長」3枚の広告看板には地元警察に対する侮辱とも取れる文言が大きく載せられたのだ。このことで小さなこの町に不穏な空気が漂う。
娘を殺されたミッドウェル、余命宣告を受けている警察署長のウィロビー、ウィロビーの部下でレイシスト(人種差別者)のジェイソンなど、この町で暮らす人達の心の葛藤と人間模様が描かれている。人間は良いところもあれば悪いところもある。当たり前のことだけど、自分の中で他人を敵・味方で分けてしまうことってありますよね?この作品は出てくる役それぞれに心の葛藤があり、彼等一人一人に感情移入ができる作品だと思います。主人公だけに感情移入をする作品もいいですが、俯瞰で作品を見ていろんな視点で考えるきっかけをくれるこの作品は、観ている人に新しい気づきを与えてくれると思います。

スリー・ビルボード / Three Billboards Outside Ebbing, Missouri
10

価値観の反転につぐ反転。スリービルボード。

この作品は主人公の女性がスリービルボード、三枚の広告看板を出すことからストーリーが始まります。主人公は娘を暴行され焼かれて殺されるというとてつもない悲劇に見舞われています。そこで広告看板を出す、なんで捜査をしてくれないの、犯人の逮捕はまだ?という内容と、地元の警察官の名前も載せています。
この流れだと、悪徳警察官と、善の主人公の話しのように感じますが、この作品は違います。主人公の気持ちもわかるし、警察官の気持ちもわかる。両者にも、ほかの登場人物にも善と悪が両方混在しており、それは立場によって見方が変わる映画だと思います。
こんなひどいことをするという場面でも、気持ちがわかってしまうような場面が多く、善悪の価値観を問いかけられる映画なので、観た後にはドッと疲れたという感覚を覚える人もいると思います。そして、観た後もずっとジワジワジワジワ考えが沸いて、眠れなくなります。ここはこうだろうという絶対的な答えがないので、観た人と感想を言い合いたくなります。
決して気持ちの良い映画ではないのですが、映画好きの人には絶対に観ることをオススメします。そして自分なりの考えを構築する作業がとても楽しい作品だと思います。