大奥 / Ooku: The Inner Chambers

『大奥』とは、2004年8月号から2021年2月号まで『MELODY』(白泉社)で連載された、よしながふみによる歴史改変SF漫画である。この作品は史実とフィクションを織り交ぜた、男女逆転の物語だ。江戸幕府徳川家光の時代に若い男だけが感染する赤面疱瘡(あかづらほうそう)といわれる疫病が流行し、男が人口全体の4割しかいなくなった日本を描いている。
本作品は海外でジェンダーに関する内容を称賛され、2010年に「2009年度ジェームズ・ティプトリー・ジュニア賞」を受賞した。また日本では2006年に「第10回文化庁メディア芸術祭マンガ部門」で優秀賞を獲得し、2009年には「第13回手塚治虫文化賞」でマンガ大賞を受賞した。
コミックスは全19巻が刊行され、2020年12月時点で累計発行部数は600万部を超えた。実写映画は2010年10月1日に公開され、「水野・吉宗篇」として水野役を二宮和也、吉宗役を柴咲コウが演じた。また2012年12月22日に公開された『有功・家光篇』では有功役を堺雅人、家光役を菅野美穂が演じた。

大奥 / Ooku: The Inner Chambersのレビュー・評価・感想

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大奥 / Ooku: The Inner Chambers
10

男女逆転!その発想はなかったの連発の作品!

江戸時代、平和な世を存続させるために築かれた将軍のプライベート空間「大奥」。
その登場人物達を男女逆転させたのがこの作品です。
実写映画化もされているので、既にご存知の方も多いかも知れませんが、その原作にあたるのが、この作品です。
この漫画は、将軍=男性という既存の常識を覆し、その周りの男性陣との恋愛模様や政治情勢を丁寧に描いています。
誰しもが一度は耳にしたことのある歴史上の人物が男女逆転している為、新鮮な気持ちで読めますし、
江戸時代初期から終焉までを人間ドラマを交えながら描いているので、
今まで「歴史ものは難しそう…」と遠ざかっていた方にも、きっと読みやすい内容になっていると思います。
ただ登場人物が多かったり、難しい言葉も時々出てくるので整理しながら読み進めた方が良いのではないかな、とも思います。
所々フィクションが混ざっていますが、それも作品自体にいいスパイスを与えていますし、
なかなかにドロドロな内容や考えさせられる場面もあったりと読んでいてなかなか飽きがこないのもこの作品の良いところです。
最終章では、現在の「将軍=男性」という概念に当てはまるように物語が進んでいく様は、思わずお見事!と思わずにはいられないと思います!
完結済みの作品なので、是非一気見をおすすめします。

大奥 / Ooku: The Inner Chambers
10

女の苦悩をここまで書き表した作品を私は知らない

男女逆転大奥、というキャッチーなコピーが有名になったのは確か10年近く前になる。嵐の二宮くんが主演で映画化もしていたはず。
もともと筆者はドラマでやっていた女主体のあの大奥を舞台にした物語もかなり好きなたちだ。ドロドロした愛憎劇めっちゃ面白い…!と思うタイプ。本作である男女逆転大奥も中々にすごい。女同士のドロドロの戦いというわけではないけど、それが故に、人の内面がすごく描かれていると感じる。
特に女将軍の苦悩。世継ぎを作るためとはいえ、毎夜毎夜大奥の男に抱かれなければならず(ここは男の将軍だったらウハウハなのかもしれない)この人と思う人がいても子宝に恵まれなければ歓迎されず、側室をあてがわれ(これは男将軍でも同じか)挙げ句の果てには懐妊しても子供を産むためには政務から一時的にはならなければならないという始まりから終わりまで彼女の好きにできることなんて1つもないんじゃないかという感じ。ただどの女将軍もとにかく強くて魅力的で素晴らしい。男性が読んだ時の感覚はわからないが女の筆者からするともうとにかくグッとくる。ただ1人に愛されたい苦悩、添い遂げたい苦悩、将軍としての在り方での苦悩。そんな苦悩の表情の描き方が秀逸。単純に歴史の勉強にもなるのでおすすめである。