声優→最高! 作画→最高!! 音楽→最高!!! 脚本→?
良いアニメを構成する重要な要素として、声優の演技、作画、音楽、そして物語の核を担う脚本等が挙げられるだろう。2011年から2012年にかけて全22話で放送された『ギルティクラウン』(GUILTY CROWN)は、視聴者にとても不思議な感覚を与えるアニメ作品である。
舞台は宇宙から飛来した「アポカリプスウイルス」と呼ばれる未知のウイルスによって荒廃した、2029年の日本。主人公である桜満集(おうましゅう)は平凡な高校生活を過ごしていたが、ある日お気に入りの場所である廃校舎へ行くと、そこには当時ネットで活躍していた音楽グループ「EGOIST」のボーカルを務める楪いのり(ゆずりはいのり)がいた。
しかし、いのりはボーカリストとは別にレジスタンス組織である「葬儀社」のメンバーであり、集と出逢った後に国家組織に捕まってしまう。集は他人のコンプレックスや恐怖を武器に具現化する能力「ヴォイド」に目覚め、いのりを救出した後も能力を使って日本を救うため戦うことを決める。
『ギルティクラウン』という作品はボーイミーツガールの展開から始まる王道の勧善懲悪アニメであり、中二心をくすぐる設定と熱い展開が魅力だ。
しかし、物語の中盤でとある事件が生じ、魅力であった“熱さ”が失われ陰鬱とした展開が始まってしまう。ここで物語の温度差を楽しむ人がいれば、物語の魅力の一つが欠けてしまい落胆してしまう人もいるだろう。
さらにこの陰鬱とした雰囲気は思いのほか長く続き、物語は中だるみするため、普通のアニメであれば人々の記憶に残るようなアニメにはならないだろう。
だが、『ギルティクラウン』の凄いところはそんな中だるみした物語をも支える声優、作画、音楽のクオリティである。
主人公の集の声優は『進撃の巨人』の主人公役を務めた梶祐貴。制作は『攻殻機動隊』や『PSYCHO-PASS』等の名作アニメを手がけたプロダクションI.G。劇伴は『進撃の巨人』やドラマ『医龍』など様々な作品でクールなBGMを手がける、澤野弘之が担当した。
また、オープニング曲とエンディング曲は、当時ボカロPとして絶大な人気を誇っていたryoがプロデュースしたグループである「Supercell」と「EGOIST」が担当した。
“熱さ”を失った『ギルティクラウン』は声優による迫真の演技、美麗かつ勢いのある作画、物語の雰囲気に深みを与える音楽により観る者を釘付けにする。
中だるみする物語を他の要素が完璧に支える様に「何なんだこのアニメは!」と驚くことだろう。
そして観続けたその先には、涙無しでは観られない最終回が待っており、ギルティクラウンは“終わり良ければ総て良し”という言葉を味わえる作品となっている。