利便性を追求し続けた社会の歪みをそれぞれの立ち位置で見せてくれる作品
これまでドラマ『アンナチュラル』、『MIU404』で社会問題を上手くエンタメで表現してきた監督塚原あゆ子と脚本野木亜紀子が再びタッグを組んだ本作。まさに本作も社会問題となっている物流業界を舞台に、便利に発展したシステムをあたりまえに利用し続ける人々とその犠牲となっている物流業界で働く人々をポジションごとに上手く描いている。人間が求めて作ったシステムにいつの間にか人々が支配されている状況。システムに疲弊した人々の叫びに対し、企業は利益を優先し決してそのシステムを止めようとはしない。便利に発展した社会で起こっている歪みを考えさせられる作品だ。私たち人間は、果たしてこのまま利便性だけを追求し続けて良いのだろうか。私たちが気軽に頼んでいる宅配サービスの裏では、物流センター、配送業者、委託配送員が日々犠牲を伴いながら働いていることを忘れてはならない。ということを作品のメッセージとして強く感じる。また本作は、物語の内容もさることながら、豪華なキャスト人が次々と登場し、目でも飽きさせない作品となっている。また『アンナチュラル』、『MIU404』と世界観を共有した゛シェアード・ユニバース゛という新たな形を取っており、各ドラマに登場するキャラクターのドラマのその後の様子を覗えるのも楽しみの一つだ。ドラマを観たファンにとっては、嬉しい演出になっている。