試験はどうした
灰原薬作、学問のカミサマ菅原道真が主人公の謎解きクライムサスペンス。恐らくあまり詳しい資料の残っていない時代と思われ、戦国時代や幕末などに比べれば人物も聞いたことのない人ばかり。「この人達、同じ時代だったのね…」と初めて認識することもしばしば。時代が時代なだけに、呪いとか鬼とかを信じるのが当たり前な中で、それらを真っ向から否定する主人公が、実に科学的・論理的に謎解きをしてくれて、とても痛快。本人は、死後、怨霊として恐れられたというのに、本当にこんなに現実主義者だったなら皮肉なものだ。藤原氏全盛期の中で、学問を極めたいのに、知らず知らず政治にも巻き込まれて行くのだが、藤原氏の政治がこれまたきな臭い。どうやら菅原家の方にも薄暗い過去があるよう。得業生の試験に合格したいと言いつつ、全然試験にチャレンジしている様子もない。高子も全然入内しない。匂わせの謎やこれら事情が、なかなか明かされないので、そろそろ劇的な展開が欲しいところ。よくある謎解きサスペンスと言えばそうなのだが、よく知らない時代の勉強になってとても面白い。最後には晩年の左遷の事情まで描いてくれるのだろうか。今後の展開に期待。