オフサイド

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熱中した懐かしのサッカー漫画

昭和から平成時代のサッカー漫画といえば、この作品を常に思い浮かべる。現代サッカーでは主流である「ボランチ」や「トップ下」、「ビルドアップ」という言葉は存在せず、キーパーへのバックパスが許されていた時代のサッカー漫画である。
主人公の熊谷五郎、「くまがい」ではなく「くまがや」という名前である。1勝もできなかった弱小中学校のゴールキーパーだった熊谷五郎。高校サッカーに憧れて、サッカーの名門校横浜南高校に志願するも受験当日、車に轢かれそうになった幼馴染のなぎさを守ったことからに受験に間に合わず、無名の川崎高校へ入学することとなる。そこで、薬丸、シンゴというこちらも全国レベルのサッカーセンス抜群のコンビでありながらも、素行の悪さから日の目を浴びることのなかった2人と再会する。ちなみにこの2人のことは、中学校時代の最後の練習試合で対戦しており、お互いの実力を知っていたのだ。
ここからは、熊谷五郎が、日本人離れした身体能力を生かしたシュートを武器に、キーパーからフィールドプレーヤーになり、無名の川崎高校が全国を舞台に活躍、熊谷五郎は高校卒業後にはブンデスリーグ1部FCケルンへ入団することとなる。
高校サッカーを舞台に、薬丸やシンゴ、先輩である織田さんといった仲間たちとともに、宿敵横浜南高校の茅野、日比野、強靭なゴールキーパー黒崎、全国では静学の暮林などのライバルとの熱戦が描かれている。
国体で神奈川県選抜として茅野、日比野や黒崎といったライバルたちと同じチームとして戦うこともあり、 心躍らされた。神奈川選抜の指導に来ていたドイツのプロサッカー選手ミュラーは熊谷を一目見て、その才能を見抜いた。身体が固く、身体能力を生かし切れていないことを伝えるべく、柔軟体操などのプラクティスを熊谷だけに課した。そこからサッカー選手として大化けをしていく熊谷。
主人公である熊谷五郎を中心に、その仲間やライバルのキャラクターが際立っているのがこの漫画の良さである。熊谷五郎率いる川崎高校との対戦もさることながら、ライバル校同士の対戦にも見応えがある。どこが川崎高校と対戦するのか、鹿実と静学はどちらが強いのか、成京と横浜南はどうかなどと勝手に想像してしまう。
2年生の時に3年の暮林率いる静岡県代表静学を破り、全国優勝をするが、3年夏のインターハイで突如現れたライバル埼玉県代表の武双高校の松浦たちに敗れ、新たな展開を迎える。こうして、3年最後の高校サッカー選手権の決勝戦の武双高校戦までが描かれている。
この漫画の魅力は、最終巻の最後に描かれている「その後のオフサイド」にある。6ページほどにまとめられている仲間や後輩、ライバルたちのその後である。川崎高校の薬丸、シンゴは初めて別々の実業団チームへ、ライバルたちが大学サッカーで同じチームのなったり、後輩たちの高校サッカーでの勢力図が描かれていたり。ワクワクさせられる。そして、熊谷五郎の幼馴染のなぎさが記者をしている職場に1枚のファックスが入る。そこには「ブンデスリーガ開幕第1戦、後半から出場したゴロー・クマガヤがミュラーからのパスを受け貴重な先制点を彼自身としても初ゴールを挙げる」と書かれていた。