ベイビー・ブローカー

ベイビー・ブローカー

『ベイビー・ブローカー』とは2022年に公開された韓国映画である。監督は日本人である是枝裕和。2022年5月に行われたワールドプレミアでは、上映終了後12分間にも及ぶスタンディングオベーションが起こった話題作だ。赤ちゃんポストに入れられた乳児をこっそり連れ出し子どもを望む夫婦へ違法に売る2人の男。ひょんなことから赤ちゃんを置き去りにした母親が現れ、一緒に養父母を探すことになる。養父母を探す旅に出た彼らを現行犯逮捕しようと、2人の刑事が尾行していた。それぞれが複雑な状況を抱え物語は進んでいく。

ベイビー・ブローカーのレビュー・評価・感想

ベイビー・ブローカー
7

女性と男性の違いもわかるかもしれない「ベイビー・ブローカー」

韓国では国民的歌手としておなじみのIUではなく、主演俳優イ・ジウンとしてのIUをこの映画で見ることが出来る。
IUは美しくきれいだが、この映画で演じる「ムンソヨン」はハマっている役柄に思う。ムンソヨンは若くして子を宿してしまい、相手方もなく出産後は路頭に迷い、苦悩して赤ちゃんポストに預ける。その後赤ちゃんを取り戻すが、のちにブローカー組織とともに我が子を売ろうとするという役だ。また、ムンソヨン自身も粗末な孤児院的部屋で暮らしていたのだった。現代社会での闇部分が描かれているようで、リアリティがあり痛みを感じさせられる。
40代に突入しベテラン俳優の域に入ったカンドンウォンは、相変わらず容姿端麗。そのカンドンウォンが演じる「ユンドンス」も幼少期からの闇が深く、児童養護施設職員として働いているが、家庭環境に恵まれなかった子供たちの行く末のひとつであるかのように感じさせる。
家庭環境に恵まれない、またこれまで恵まれていなかった人々が、学校や自宅以外で自分だけの居場所があることの大切さがわかるシーンがある。
家族以外の者たちで絆を持って行動していくが、その距離感や存在意義についても温かさや一瞬の楽しさを共有する心があった。
結局はお金に困っても、殆どの女性は産んだ我が子を本能では簡単に手放すことができないことが描かれており、男性の本能にはないのかもしれないという違いも受け取れる作品だった。