MEN 同じ顔の男たち

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MEN 同じ顔の男たちのレビュー・評価・感想

MEN 同じ顔の男たち
6

A24の怪作 独特の世界観で描かれるトラウマ映像

過去のトラウマに囚われる主人公ハーパーは心を癒すため、都会から遠く離れた美しい田舎町を訪れます。彼女の滞在するカントリーハウスの管理人のほか、少年や神父、警察官と出会いますが、ハーパーは男性たちが全く同じ顔をしていることに気付きます。そして、彼らはほとんど全員が女性に対し差別的な偏見や抑圧的な価値観を持っています。
散歩に出た森で遭遇した不審者に追い回されたり、現実と区別のつかない幻覚のような出来事に見舞われたハーパーは心を癒すどころか、いっそう追い詰められていきます。しかし車で片道何時間という田舎町では、立ち去ることも容易ではありません。田舎町での不快な出来事を通してトラウマの元凶である夫の死がフラッシュバックする一方、不気味な出来事は連鎖していき、得体の知れない恐怖が徐々にハーパーを蝕んでいきます。
「ミッドサマー」や「ヘレディタリー 継承」で一世を風靡したA24の作品というだけあって、鮮やかな色彩で印象付ける画面作りや生理的嫌悪を掻き立てる演出は随一です。思わず目を背けたくなるほどのおぞましい光景と理不尽で倒錯的な悪意に晒される恐怖は他のホラー映画にはないものです。ジャンル分けの困難な異質な作風と一度見たら忘れられない映像を是非体験してほしいです。

MEN 同じ顔の男たち
8

精神描写の鮮烈なトラウマホラー

ミッドサマー、ヘレディタリーに続き、またもや頭のおかしな映画を世に放ったA24。今回も期待を裏切りませんでした。

夫を亡くした自分を癒すため傷心旅行にでかける主人公。そこで出会ったのは美しい自然と、どこか亡き夫と似た部分を持つ同じ顔を持つ男たちだった。夫の嫌だった部分を個別に人間化したような登場人物たちと、その直球で鮮烈すぎる描写に、エンディング後の映画館は静まり返り、観客全員がドン引きでした。いつもはおいしくてすぐに空になるポップコーンが半分以上残りました。間違っても親や付き合いたての恋人と観てはいけません。自殺・出産・生まれ変わり・狂気…いやな要素をすべてミキサーにかけたような描写の連続で、気まずくなること間違いなしです。

明るく、宗教的な要素を入れてサブリミナルや嫌な予感しかしない伏線を張り巡らせてくるA24ですが、今回はそういった小細工を感じさせず、ただストレートに、主人公の心の闇を映像化・擬人化し、それと向き合う主人公の心の変化を感じさせてくれる作品です。
ラストシーンは映画史に残る迷シーンかつ名シーンですが、彼女の心理状態を考えるとある意味ハッピーエンドなのかも。

トンネルで独特なメロディをこだまさせる主人公の声がいい意味でも悪い意味でも頭から離れなくなる、傑作トラウマホラー。