小説のような読み心地のハードボイルドグルメ漫画
言わずと知れたドラマ版「孤独のグルメ」はずっと見続けてきましたが、読んだことがなかった原作漫画が気になり、読んでみました。
主演の松重豊さんのキャラクターのせいか、親しみやすさを感じていたドラマ版に対し、漫画はハードボイルドな雰囲気を感じました。
ただご飯を食べることが中心なのに、硬派な語り口が面白かったです。
頭の中で実況している、1人でご飯を食べる主人公や、街の様子を読むスタイルの漫画は珍しいと思いました。
ドラマにはなかったはずの、温められるシウマイ弁当を新幹線の車内で食べ、周囲に匂いを充満させ失敗したエピソードのほか、選んで失敗した物の話もあり新鮮でした。
「そんなこと考えながら買い物するな」と共感できる、コンビニで夜食を購入するだけの描写も良かったです。
飲食店で豚肉炒めととん汁を注文し豚がだぶったり、コンビニでおでんのうずらと卵焼きを購入して卵が重なったり、あるあるの小さな失敗も面白みがありました。
ドラマ版で聞いたことがなかったはずの、よりリアリティがある「このきゅうりうまくないな」のセリフに親近感を覚えました。
井之頭五郎らしい名言「ああ、なんてことだ、食べ始めているのに、さらに腹がへっていくかのようだ」が出てきたときは嬉しかったです。
甲子園の予選に出場する甥っ子を叫んで応援していました。「苦手だ」と思いながら自然派のお店に入り、食べてみたら美味しくて追加注文しました。井之頭五郎のこれらの断片的な情報やちょっとした機微に心惹かれました。
小説のような読み心地の魅力的な漫画を、ぜひ読んでもらいたいです。