素晴らしき青春群像劇!
ある日の「金曜日」の放課後。バレー部のキャプテンであり絶対的なエースの桐島が突然部活を辞めたという噂が校内に響き渡った。学校内のスターである彼の周りのクラスメイトや部員には衝撃が走る。そんな桐島に関わる人たちに人間関係の変化が少しずつ現れる。
作品の見どころですが、とにかく役者陣が素晴らしい。
神木隆之介さんをはじめ、豪華俳優陣が集結しています。クラスメイトのスクールカーストを彷彿とさせるヒエラルキーの中に人間関係の陰と陽が存在し、その役たちをそれぞれの俳優さんたちが見事に演じています。
クラスメイトの微妙な位置関係が描かれていて、そこを俳優さんたちが上手いこと表現していて見応えありです。その中でも、印象的なのは東出昌大さん演じる菊池という役。桐島の部活が終わるまで校舎裏でバスケをしながら待つ男子生徒たち。そこに菊池もいるのですが、そこでふとした拍子に残酷な発言をするのです。
「だから結局、できるやつは何でもできるし、できないやつは何もできないってだけの話だろ」というセリフに、クラス内のカーストの縮図が詰まってるように感じました。
菊池は言わばクラスの陽キャラ的存在ですが桐島のスター性には及ばず、野球部に所属していましたが部活になかなか顔を出さず何となく毎日を過ごすだけの日々。そこに桐島への憧れもあり劣等感を感じていたのではないのでしょうか。同じ陽の人の中にもさまざまな人間模様が描かれて非常に心を動かされます。
桐島とは何だったのか。
これはネタバレになってしまいますが、実は桐島、物語に1度も出てこないんです。それでは桐島という人は一体何者だったのか。
この映画は、朝井リョウさんの同名小説が原作です。そこで原作の朝井リョウさんが伝えたかった意図を考察しました。
それは桐島という絶対的な人がいなくなると周りの人々はどのように変化するのか。そこから生まれる人間関係が渦巻く心の機微が、軋轢、衝突、困惑などを生み出す様を描きたかったのではないかと感じました。
まさしく、これは学校でありながら、社会の縮図が表現されている素晴らしき青春群像劇だと思います!