整形水

整形水のレビュー・評価・感想

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整形水
9

本当に“外見だけ”で人生は決まるのか?

タイトルに相応しく、この映画の舞台は整形大国である韓国。
主人公はTV局で裏方として働く女性、イェジ。
しかし肥満体型で容姿が醜いために職場でも日常生活でも散々な扱いを受けてしまっている。
更にとある些細なきっかけでイェジの画像はネットに晒されてしまい、それが原因で誹謗中傷のメッセージまで届く始末。そんな彼女の元に天の救いのごとく現れたのは”整形水“というド直球すぎる名前の化粧品。
なんでもその”整形水“に浸せば、顔だけでなく全身までも理想の形に作り変えられてしまう。
もちろんイェジは購入を決意。
(親を脅迫して)整形水に大金を叩き、見事Kpopアイドル並の美貌と抜群のスタイルを手に入れることができたのだった。
…と、ハッピーエンドで終わるはずも無く。
みんなからチヤホヤされ男性も選び放題なパラダイスを一時は味わえたイェジだったが、彼女にはそんなことが比にならないくらいの転落劇が待ち受けていた。
本作の、特に予想外で面白い点は、醜い容姿の主人公イェジを可哀想な悲劇のヒロインに描かないよう徹底していた事だろう。
彼女はむしろ自分の容姿コンプレックスゆえに周りを僻み、自分の不幸は全て容姿だけが原因だと思い込んでいる。
それゆえに、整形水を手に入れてからの彼女の言動は悪化の一途を辿る。
美しくなる前は、美しい容姿だけで女性を選ぶ男性に散々ケチをつけていた割に、いざ自分が美しくなると「自分に釣り合うイケメンじゃないと無理」と言い出す。
このシーンは最大の皮肉だ。
容姿よりむしろ中身に問題がある主人公は、結論から言うと残念ながら全く幸せにはなれなかった。
主人公がそうある事で、この映画のルッキズム批判がより強く感じられたと思う。
また、”整形水“とは一体誰が、何のために送ってきたのか?
予想の斜め上の展開には驚いたが、その点の謎解きもなかなかに凝っていて、不穏な雰囲気を楽しめる作品だ。