ダーウィン事変

ダーウィン事変

『ダーウィン事変』とは、2020年8月号の『月刊アフタヌーン』より連載された、うめざわしゅんによる漫画。アメリカを舞台に、半分ヒトで半分チンパンジーの「ヒューマンジー」チャーリーを主人公とした「差別とテロ」を題材とした物語である。15歳のチャーリーは人間の両親のもと高校に入学し、人間の女の子ルーシーと出会い友情を育む。一方で、「ALA(動物解放同盟)」と名乗るテロ組織はチャーリーを仲間に引き込もうと画策する。数々の賞にランクインし、海外でも話題となっている。

ダーウィン事変のレビュー・評価・感想

ダーウィン事変
9

社会のタブーに切り込んだ傑作

作品の主人公はチンパンジーと人間を交配させて誕生した「ヒューマンジー」のチャーリー。物語の中では動物解放を謳うALA(動物解放同盟)という組織が強硬的にテロなどを起こし、動物虐待、動物実験などに反対している。その組織がチャーリーを仲間に引き入れようとすることで、物語が展開していく。
人間でも猿でもないチャーリーが人間社会の中でテロ・炎上・差別に巻き込まれていくストーリーだが、チャーリー視点からの人間社会の矛盾や疑問、不条理な事柄がとても考えさせられる物語である。
この作品をきっかけに、人間として動物と共存する社会で、非道な動物実験をしたり不要な殺生を行ったり、延いては肉食するということはどうゆうことなのか考えさせられ心が痛んだ。人間の両親(育ての親)を持ち、人間社会の中で生活するチャーリーだが、完全に人間側に立っているわけではなく、学校では生徒と討論する場面もある。ALA側でも、人間側でもなく、自分のアイデンティティや生命に対して独自の意志を持つチャーリーがどのような選択をし、どんな物語の結末になるのかが楽しみだ。
作品のヒロインは、ルーシーという陰キャながら優秀な女生徒で、チャーリーに寄り添い、共に困難を乗り越えていくパートナーとなる。人間とヒューマンジーの異種は恋愛できるのか?2人の関係がどうなっていくのかも見どころだ。

ダーウィン事変
10

新感覚な主人公無双作品

チンパンジーと人間(ヒューマン)の子供、ヒューマンジーの物語。
SFっぽいと思い読み始めたら、全く違う印象!どちらかと言うとリアルさを求めた作品。
ヴィーガンの実態や、彼らの裏と表の活動も含まれ、まだ完結はしてないが1巻を読み終わる頃には夢中になってしまった。
その理由としては、主人公であるヒューマンジーの心理描写はないということだ。
主人公の周りの心理描写が強いので、より客観視できることにより作中に入り込める。
まさに自分が登場人物の1人となり、ヒューマンジーというものを観察してるイメージ。
ヒューマンジーが人間社会にどう溶け込んでいくのか?そしてヒューマンジーという生物はどういったものなのか?
さらには、ヴィーガンは正義なのか?悪なのか?
見どころとしては、主人公の能力の高さ。
チンパンジーの遺伝子が入っているので、身体能力は高いのは勿論のこと、人間の思考力が高く受け継いでいる。
通常の思考力に加え、動物としての合理性が兼ね備えられているので、恐怖や倫理観はあまり無く、合理的かつ効率的な思考回路になっている。
その恐怖感や倫理観が無いことが、主人公を取り巻く裏の存在との戦いに役立っている。
「主人公無双!」の作品が好きな方で、今までのPOPな作品に飽きた方は是非とも読んでください。