社会のタブーに切り込んだ傑作
作品の主人公はチンパンジーと人間を交配させて誕生した「ヒューマンジー」のチャーリー。物語の中では動物解放を謳うALA(動物解放同盟)という組織が強硬的にテロなどを起こし、動物虐待、動物実験などに反対している。その組織がチャーリーを仲間に引き入れようとすることで、物語が展開していく。
人間でも猿でもないチャーリーが人間社会の中でテロ・炎上・差別に巻き込まれていくストーリーだが、チャーリー視点からの人間社会の矛盾や疑問、不条理な事柄がとても考えさせられる物語である。
この作品をきっかけに、人間として動物と共存する社会で、非道な動物実験をしたり不要な殺生を行ったり、延いては肉食するということはどうゆうことなのか考えさせられ心が痛んだ。人間の両親(育ての親)を持ち、人間社会の中で生活するチャーリーだが、完全に人間側に立っているわけではなく、学校では生徒と討論する場面もある。ALA側でも、人間側でもなく、自分のアイデンティティや生命に対して独自の意志を持つチャーリーがどのような選択をし、どんな物語の結末になるのかが楽しみだ。
作品のヒロインは、ルーシーという陰キャながら優秀な女生徒で、チャーリーに寄り添い、共に困難を乗り越えていくパートナーとなる。人間とヒューマンジーの異種は恋愛できるのか?2人の関係がどうなっていくのかも見どころだ。