ほろ苦い恋愛とはこういうものなのか
「君の瞳に乾杯」、「これは私たちの美しい友情の始まりだ」この作品は数々の名言に彩られている。
舞台はドイツが勢力を拡大させていった抑圧された時代。
主人公のリックはフランスのカサブランカの地で「カフェ・アメリカン」を経営していた。
そのカフェに訪れたのは政府に追われる指導者ヴィクトル・ラズロとその妻イルザ。
その二人を見てリックは動揺を隠せなかった。イルザはパリ時代に自分の前から何も言わずに消えた元恋人だったのだ。
自分らしく生きようとすればするほど命の危険を感じた激動の時代。
複雑な人間関係になってしまったのは誰が悪かったからではなく、仕方がなかったんだと思わずにはいられない。
この3人の関係と行く末は最後まで気をぬくことができないが、見た後には自然と上を向くくらい爽やかな気持ちにさせてくれる。
主演のハンフリー・ボガードはボギーの愛称で親しまれたハリウッド俳優だ。
「カサブランカ」で二度目のアカデミー主演男優賞に輝いた。
ちなみに一度目は「アフリカの女王」で、その後は「ケイン号の叛乱」でも受賞した。
まさに渋い男の代名詞と言える役者である。恋に苦悩する姿は当事者には嫌な話だろうが、観客の目を引き付ける色気に溢れている。