D.A.N.

D.A.N.のレビュー・評価・感想

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D.A.N.
10

バンドサウンドとクラブサウンドの相乗効果

このアルバムを端的に表すのなら、「夜」という言葉が一番しっくりとくるのではないかと思う。
このバンドのサウンドはいくつものレイヤーが積み重なり、そしてその残響音に体を無意識に揺らされるのである。
D.A.N.というバンドは三人組からなるバンドである。そんな彼らは様々なアーティストからの影響を受けている。
オルタナティブやクラブシーンからの影響を受けているのは言わずもがなであるが、宇多田ヒカル、KIRINJIなどのポップスなどからも影響を受けている。
ボーカル櫻木大悟の織り成す歌詞は非常に情景描写などの表現に優れていると感じる。状況変化を端的に表すことでD.A.N.のアーバンなサウンドを決定づけてくれるのだ。

アルバムの収録曲は全8曲である。すでにミニアルバムなどに収録されている「POOL」、「Ghana」に加え新録の6曲で構成されている。
最初に記述したように、レイヤー層の厚さがあるのにも関わらず、音数の多さは感じないシンプルな構造で、リズム隊の素晴らしい演奏を深く感じることができる。それでいてどこかに怪しさを感じるシンセサイザーやボーカルによって、現実世界からの乖離をこのアルバムを聴いている間は体感できるのである。

D.A.N.
10

唯一無二のミニマルメロウ、D.A.N.の魅力

音楽性だけでなく、ビジュアルやテーマなど、様々なスタイルのミュージシャンで溢れかえっている日本のミュージックシーンですが、その中でもおすすめしたいバンドが、D.A.N.(ダン)です。
自らを「ミニマルメロウ」と称し、特異な完成で切り取った世界を独特の音楽スタイルで描き出しています。
世界を変えてやるとか、リスナーに対して何かを強く訴えかけるようなありがちな要素は1つも感じられません。
執拗に繰り返されるフレーズが心地よく耳に入り込んで、脳髄を柔らかくほぐします。
D.A.N.の最大の魅力は、その歌詞にあります。
世界を変えたいとか、リスナーに対して何かを強く訴えかけるような、どこかで聞いたような手垢まみれのフレーズは1つも登場しません。
退廃的ともとれる目の前の世界を、希望も絶望もなく、ただ淡々と、けれども文学的に再構築されたその歌詞に、引き込まれる人は多いのではないでしょうか。
脱力したような歌声が、ぐっとこちらの心をとらえます。浮遊感のあるベースとドラムのサウンドは強烈な中毒性があります。
それなのに、押し付けがましくなく、ただただ、常にそこにあるだけ。
まるで静かな森の中を思わせます。
刺激的な音楽に疲れてしまったら、D.A.N.の宇宙に抱かれてみてはいかがでしょうか。