エンタープライズと乗組員たちの魅力で見せる
1960年代に放送を開始し、今なお人気を博しているSFの名作のリブート版。
ヒットメーカー、J・J・エイブラムスの手になる本作は旧版の設定を引き継ぎながら、大胆な刷新も交えた新解釈の「スター・トレック」として現代に蘇った。
この監督の作品の特徴である映像の美しさは息をのむほどで、キラキラと輝くような航宙艦を見て、胸が熱くなる旧作ファンも多いだろう。
新たにスター・トレックの世界に触れるファンにとっては迫力のあるアクションシーンも魅力だろう。
キャラクターも現代風に取っつきやすい造形になっている。
例えば、ウフーラという女性キャラクター。
旧作では、アメリカで初めて連続ドラマのレギュラーとなった黒人女性で、可愛らしく大人しい性格として描かれていた。
今作では勝ち気で活発、自分の能力に自信を持った強い女性になっている。
とんがり耳で有名なスポック副長は、旧作では恋愛とは縁遠い存在だったが、本作ではウフーラの恋人である。
テンポの良いストーリーラインだが、展開のスピードが速すぎて、特に新しい観客にとっては筋が追いきれない部分があるかもしれない。
旧作ファンにとっては何度も観て細かいこだわりを発見していく楽しみとなるだろうが、単なるハリウッドアクション大作とだけ取られる可能性も否定できない。
新ファンがリブート以前の過去作に手を伸ばしたくなる仕掛けは少ないように感じる。
ともあれ、新たに命を吹き込まれたエンタープライズ号の処女航海は、ダイナミックなSFの魅力を感じたい者にはうってつけの1本だろう。