ヒルビリー・エレジー 郷愁の哀歌 / Hillbilly Elegy

ヒルビリー・エレジー 郷愁の哀歌 / Hillbilly Elegyのレビュー・評価・感想

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ヒルビリー・エレジー 郷愁の哀歌 / Hillbilly Elegy
7

家族の愛歌

米作家、J.D.ヴァンスの回顧録を映画化。
生まれはオハイオの田舎町。
そこから名門イェール大に進学。
その道のりは決して平坦ではなかったろう。
ある日J.D.は、同じ大学の白人の学生たちに生まれ故郷を『レッドネック』と呼称される。
レッドネックとは、アメリカ南部の田舎を蔑む差別用語。
生まれや育った環境の格差を目の当たりにした矢先、更なる問題が発生し──。

この映画は、壮絶な家族史である。
原作は劣悪な場で暮らす白人貧困層の問題を掘り下げた、より政治色の濃いものらしいが、この映画は家族の物語に置き換えている。
原作と内容が異なるため賛否が分かれているようだが、家族の愛憎が分かり易く抽出されており、私にはとても興味深い映画だった。

ヒルビリー・エレジー 郷愁の哀歌 / Hillbilly Elegy
8

アメリカの格差を描いた映画

J.D.ヴァンスの同名の自伝小説の映画化で、ヒルビリー、レッドネックなどと呼ばれる貧しい白人家族を扱った映画です。監督はロン・ハワード、J.D役はガブリエル・バッソ、祖母役はグレン・クローズ、母親役はエイミー・アダムスです。
主人公はもともと祖母たちとケンタッキー州の田舎に住んでいたのですが、一家でオハイオ州に移住します。母親は離婚後に麻薬依存が止められず、何かとJ.Dたちに迷惑をかけ続けます。子供の世話などもしないので、祖母がJ.Dを預かることにします。祖母はもともと10代で妊娠し、祖父と共にケンタッキーに駆け落ちして暮し出した人でした。その祖母のもとでJ.Dは規則正しい暮らしをするようになり、学校でも優秀な成績を取るようになります。
主人公のJ.Dは高校を出た後に海兵隊に入り、その後大学院まで進学して弁護士になった人ですが、母親は高校で成績優秀だったにもかかわらず、誰にも大学への進学などの相談もできなかったことから、看護学校に進学し、看護師の資格を取ったのですが、今でも不満を強く持っているのでした。そのため何かある度に麻薬を使い、逮捕されたりしてJ.D達を困らせるのでした。
母親役のエイミー・アダムスは『メッセージ』で、聡明で勇敢な女性科学者の役を演じましたが、今回はそれと反対のダメな母親役を上手く演じていました。アメリカ社会の大きな格差がよく解る映画になっていました。