薔薇の名前

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薔薇の名前
10

中世修道院で起こった連続殺人事件の謎を解くある修道士とその弟子の若者の活躍

ショーンコネリー演じるウイリアム修道士がとてもかっこいい。頭もいいし冷静な判断と鋭い洞察力で殺人事件の推理を展開する。当時の教会の勢力図、イエズス会やフランチェスコ会、異端とされている少数派の宗教なども登場しストーリーを面白くしている。当時の書籍や図書館なども興味深く描かれていて、知識の習得に生きがいを感じているウイリアム修道士は修道院の図書館の蔵書の多さに目を輝かせる。本も巨大で大きく、その読み方の当時の習慣に事件の謎を解くカギが隠されている。伏線もギリシャ文字のあぶり出しや異端の修道士の証人などいろいろ張り巡らされていて、中世の謎解きの世界に入り込むことができる。ショーンコネリーの話す英語は発音がとてもきれいで聞き取りやすい。一種の風格と格調の高さも醸し出している。弟子の若者の接し方もある時はマスターとして、ある時は友人としてとても暖かい人間味にあふれている。ショーンコネリーのキャラクターが陰鬱な事件に一筋の光を与えている。
弟子の若者は農家の娘と肉体関係を持ってしまうが、貧しいその娘を魔女裁判から助けようと守る姿勢も見ていて心地よい。当時は火あぶりの刑が執行されていた時代、異端者や魔女だと認定されただけで火あぶりになってしまうのだ。
最後に修道院が火事になりウイリアム修道士が真相と眞犯人を突き止めたところで大円団。修道院は焼け跡の煙と朝の光に包まれる。恋人のような農家の娘と別れを告げ、旅を続けるウイリアム修道士と弟子のアッゾに人生の一幕を見た気がした。マスターとはそれ以来逢っておらず、またその消息も知らない。アッゾの回想の中にウイリアム修道士への深い尊敬と慕情を感じるのは私だけだろうか?