狗神

狗神のレビュー・評価・感想

狗神
8

古くから高知の村に伝わる狗神伝説とそれに引き寄せられた人々の悲劇的結末

緑に囲まれた高知県の山奥のある村、そこでひっそりと静かに暮らす美希、紙すきをして生活をするその姿はまだ40代前半というのにもう白髪が混じっていた。それが赴任してきた若い教師の晃と出会うことで生き生きとしてどんどん若返っていく。ひかれあう二人、でも二人は交わってはならない血だった。
タブーとされる近親相姦をテーマにし、村に伝わる狗神伝説とともに悲劇へと進んでいく主人公の運命を描いた作品である。村に古くから続く狗神一族の家系と旧家のおどろおどろしい過去、ホラー映画としてはかなりの秀作ではないか。これを見ると記録には残っていないが古くからある旧家には近親相姦など結構当たり前にあったのではないかと思ってしまう。
狗神の女は誰とでもまぐわう。現に主人公は自分の母親と肉体関係を持ち、しかも美希は子供を身ごもってしまう。先祖返り。まさにその言葉通り生まれてくる子供の将来は暗澹たるものになってしまう、また母親と肉体関係を持った息子も生まれてはならない子だった。こうして狗神の血はどんどん濃くなっていく。一族のものを皆殺しにしようとした父親を晃は斧で殺してしまうのだから、まさに地獄である。撃たれた晃の頭の傷を一生懸命舐めて介抱する美希の姿はまさしく犬であった。
人間のモラルを破って存在している者にはやがて破滅が訪れる。明治時代でも華族の中で血を尊ぶあまり近親相姦を繰り返し、奇形児や精神障害者を多く輩出しているという事実もある。今は遺伝子工学やゲノムもかなり解析が進んでいるので科学的根拠があるかどうかも検証できるだろう。世界でも孤立してよそ者を嫌う村とか純血を守るがゆえにタブーが行われてきたという歴史もある。日本の民俗学的に古くから伝わる伝承や民話にはホラー小説につながるネタがゴロゴロ眠っているのではないだろうか。日本の歴史の暗部を見た気がした。

狗神
7

怖さは足りない

最初、天海祐希さんがババアと呼ばれる姿で出てきて、いや、天海祐希だぞと思っていたら、若者との交流でどんどん若返り、綺麗になっていって、圧巻でした。なんかすごく透き通っていて、セクシーな役で、天海祐希さんにしかできない役でした。
お話は、とてもおどろおどろしくて嫌でした。田舎の、一つの家が君臨しているようなところと、信仰の閉鎖性というか、そういうのが出ていて、ありえないようなことでも、みんなが信じ込んでいるのが怖いです。これは物語ですが、本当にそういうところもあるのではないかと思えました。
でも、ホラーというには地味な作品ではあります。もう少し、これはホラーだってわかるような演出があってもいいと思います。
また、若者と中年の恋みたいなのも、今の時代で見ると、そんなに不自然じゃないし、実際はどうか知らないのですが、渡部篤郎さんと天海祐希さんって、そんな年が離れているように見えなかったです。いや、天海祐希さんがめっちゃ若返ってということだからでしょうか?なんかあんまりそこに恐ろしさは感じませんでした。もっともっと少年のような人を使った方が良かったのではないでしょうか。
いろいろ気になるところもありますが、雰囲気があって好きな作品です。