発想は面白いが、物語の見応えはイマイチ
本作は前作『鳥人戦隊ジェットマン』の革命を受けて作られた元祖「ファンタジー戦隊」です。
とはいえ、「元祖」だから必ずしも素晴らしいわけではない、つまり「原点だから頂点というわけじゃない」ということを思い知らされた作品です。
まず「恐竜」なのに明らかに恐竜じゃないマンモスやタイガーが居る…のはまあまだ許せるとしても、その恐竜人類である筈のジュウレンジャー5人が何故か見た目現代人と変わらないホモサピエンスの姿形をしていたり、1億7千万年前にその恐竜人類と恐竜と妖精が仲良く暮らしているという史実をねじ曲げた設定があったり、と訳の分からない設定ばかりです。
しかし、その中でも一番分かりにくいのはジュウレンジャー五人が「何のために戦うのか?」が最後までぼやけたままになっていることです。
五人の伝説の戦士が現代に蘇って戦う、という設定は良いとしても、物語を見ていくと五人が自身の使命や正義にどれほど強い思いを抱いているのか?また、どれほどの覚悟や決意を背負って戦っているのか?という「内面」が殆ど見えず、結局神様から与えられた「試練」をクリアすることが殆どで、これだと結局は「物語の都合で動かされる駒」以上の存在感を示すことが出来ず、また後半で悲劇の運命を背負って蘇った六人目の戦士・ドラゴンレンジャー=ブライに存在感を食われてしまっている、というのが実情です。
そういう意味では「亡き兄の跡を継ぐ」という意味で戦いの動機を手にしたティラノレンジャー=ゲキはまだ心情の変化が多少なりとも見えましたが、残りの四人は結局「伝説の戦士」という与えられた「記号」以上の存在にはなれず、そこが今日見ると徹底的に内面を掘り下げた「ジェットマン」やその「伝説の戦士」という設定を内面まで合わせてしっかり掘り下げて正統派ヒーロー作品として作り上げることに成功した「ギンガマン」程の強固な物語としての完成度を持たず見劣りしてしまう所以かなと思うところです。
そして何より最終的に大獣神の都合で戦いの勝敗が決定することが多く、ラストだって息子の死に涙を流したが故に魔力を失ったバンドーラ一味を永遠に封印して宇宙に彷徨わせるという結末にしていますが、本当にそれで良かったのでしょうか?ふとした拍子に誰かが壺の封印を割ってしまったらそれだけでまた問題が起こってしまいますし、また地球の環境が汚れきった現在ではとてもじゃないですが恐竜の卵から生まれた赤子が育つとも思えません。「ファンタジー」だからといえばそうかもしれませんが、やはり「実写特撮」としては無理がある展開、流れが多く目立ちます。
故に本作は徹底した「子供騙し」であり、その「子供騙し」を貫き通して楽しませること自体は出来ていますが、やはり長い目で見ての批評に耐えうる価値がある名作かと言われると微妙なところで、故に総合評価としてはやや辛口になってしまいます。