電磁戦隊メガレンジャー

電磁戦隊メガレンジャーのレビュー・評価・感想

New Review
電磁戦隊メガレンジャー
6

まだまだ伸びる予知がある過渡期の佳作

戦隊シリーズ21作目となる本作は、歴代の中でもそんなに特筆して面白い名作に挙げられることはありません。それは勿論前作『激走戦隊カーレンジャー』と次作『星獣戦隊ギンガマン』がそれぞれ不思議コメディシリーズのベテランである浦沢義雄氏、そして時代劇趣味をベースに数々の名作を書き上げている小林靖子氏をメインライターとし、カラーも方向性も明確である為に、どうにもその間に挟まれているという印象が非常に強いです。
それは実際に本作をプロデュースしたチーフプロデューサーの高寺氏が「難産だった」「戦隊とは何か?を考えるほどに迷いがあった」といった後ろ向きのことをインタビューなどで度々述懐するほどです。実際本作はまず主人公達メガレンジャーの「電磁=デジタル機器」というモチーフと「高校生」という設定の繋がりの無さ、敵側のネジレジアが異空間に存在していること、そして主人公達が敵側のネジレジアに対して余り覚悟や決意をもって戦っている「強い戦士」ではないこと等々様々な部分での迷走が見受けられます。
作風を見ても、初期は何だか漠然としたイメージで作られており、健太達の戦いに対する思いや使命感もそこまで本気というわけじゃなく、かといって高校生活の方の描写も十分に書けているわけでもない、とどこを見所にすればいいのかも分かりませんでした。尚且つ正体厳守という設定でありながら第二話で既に敵の目の前で変身するほどです。全体的に設定と描写が上手く噛み合っておらず、またメンバーがほぼ全員素人なのでお世辞にも「強い戦隊」とは言えません。
しかしそんな本作を私が平均以上叩き出しているのは16話で健太達が精神的にも肉体的にも絶望に追い込まれ、改めてその中で自分たちは「戦士」である前に「高校生」であり「人間」であるというベースをしっかり見つめ直します。そこに気付いたことで精神的な成長が得られ、そこから正にダイヤの原石は輝き出し、ネジレンジャー登場以降終盤の悲壮な展開へと繋がっていくのです。そこからは健太達のキャラクターにも幅が生まれ、またメガシルバー・早川裕作の参戦もあって物語にどんどん色が添えられ、垢抜けていきました。
そして本作でとことんまでヒーロー側の「弱さ」「未熟さ」と向き合い、一度は民衆から迫害されながらも再起を賭けて地球を守るために戦うヒーローを描いたからこそ次作「ギンガマン」で万全の体制で「強いヒーロー」を作ることが出来たと言え、本作は正に「カーレンジャー」から「ギンガマン」へ、即ち「弱いヒーロー」から「強いヒーロー」へ移り変わっていくその過渡期の佳作として、何とも言えない荒削りながらの魅力があります。