星獣戦隊ギンガマン

星獣戦隊ギンガマンのレビュー・評価・感想

New Review
星獣戦隊ギンガマン
10

ファンタジー戦隊の金字塔にして正統派ヒーローへの原点回帰

戦隊シリーズ22作目として作られた本作は、前作『電磁戦隊メガレンジャー』までを踏まえ、改めて正統派ものの戦隊ヒーローの復興・再生をかけて作られた一作です。80年代後半から段々と陰りが見え始め、91年の異色作『鳥人戦隊ジェットマン』の革命を踏まえ、その後ずっと変化と迷走を繰り返し、失速気味であった戦隊シリーズを再興させる為に、80年代戦隊のヒーロー像を90年代後期の作風を用いて立て直していると言えます。以下その根拠を列挙していきましょう。
1、戦士達が3000年もの間、用意周到に戦いに備えていた
本作を語る上でまず一番注目すべきは銀河戦士達が3000年間バルバンの復活に備えて、ずっと臨戦態勢で準備をしていたという所です。歴代戦隊には所謂「臨戦態勢で準備していた戦隊」と「素人が突然呼ばれて結成した戦隊」の二種類があります。ギンガマンはこの中で前者なのですが、更に凄いのはその戦士の資格を勝ち取るために熾烈な競争、選抜を潜り抜けた者だけがなれ、更にその結果脱落者までが出る、ということです。
本作の主人公であるギンガレッド・リョウマは優秀な兄・ヒュウガと炎の戦士・ギンガレッドの座をかけて争い戦士にはなれませんでした。しかし、それが戦士の儀式の日、突然にバルバンが復活してヒュウガがゼイハブ船長の策謀により地の底に沈められ、命よりも大切な戦士の資格である星獣剣とギンガブレスをリョウマに渡して地の底に消えていく。残されたリョウマは兄の喪失感とバルバンへの怒りから強大な炎のアースを覚醒する、という何ともドラマチックな始まりであり、名脚本家・小林靖子氏の冴えが渡る導入になっています。本作はまずこのリョウマとヒュウガの「炎の兄弟」、そして後述する黒騎士ブルブラックの三者を中心とした骨太な大河ドラマが見所となっています。
2、最後の最後まで「星を壊す者」として立ちはだかる宇宙海賊バルバン
ギンガマン側の設定がまず非常に緻密でありながら、同時にその宿敵として3000年の因縁を持つ宇宙海賊バルバンの存在感もまた本作の名作たる所以です。バルバンはゼイハブ船長を筆頭に宇宙の星々を荒らし回っていたとんでもない凶悪な連中であり、大きく四つの軍団に色分けがなされているのですが、その特徴付けやカラーもしっかり色分けが成されており、また1クール毎の交代劇がこれまたドラマチックであり、最後の最後まで視聴者を飽きさせず物語のボルテージを高めています。特に第二クールの主軸であるギンガマン、黒騎士ブルブラック、そしてブドー軍団によるギンガの光争奪戦があるのですが、ここで一度はバルバン側に光がわたってしまうも、ブドーを快く思っていなかったイリエスと叔父のブクラテスが共謀して貶め、最終的にギンガの光はギンガマンに渡り、挙句の果てに追い出され、ギンガレッドとの一騎打ちによって散っていきます。特に中盤のボルテージは私の想像を遥かに超えたものであり、今見直しても非常に密度と完成度の高い名編です。
3、「復讐の騎士」黒騎士ブルブラック
そして何より本作の評価を高くしているのは第二クールでギンガマン側にもバルバン側にもつかない第三勢力として現れる黒騎士ブルブラックです。彼もかつてはリョウマ達ギンガマンと同じ「星を守る戦士」でした。しかし最愛の弟・クランツを失ったこと、そして故郷を魔獣ダイタニクスによって宝石にされてしまったこと、この二つが重なって復讐の騎士となり、彼の復讐は始まりました。それ故に彼はリョウマ達と何度もぶつかることになるのですが、どんどん立場が不味くなり、目論見であったギンガの光入手はならず、何と火山にエネルギーを注ぎ込んで地球ごとバルバンを倒そうとします。ここまで来るともはやバルバンと何ら変わりません。しかも体内にリョウマの兄・ヒュウガを取り込んでいます。それを聞かされたリョウマはそれでも「星を守る戦士」であることを忘れず、そんなリョウマの背中にかつての弟・クランツの面影を見た彼はクランツの魂の導きにより再び星を守る戦士となり、その魂を自身の武器に封印してヒュウガへと託していきます。そんなリョウマ、ヒュウガ、ブルブラックの三者を通して「真の強さ」の本質に迫るドラマ性もまた本作の魅力です。
以上、長々と書きましたが、本作は小林靖子氏初メインの作品であることや高寺プロデューサー戦隊の集大成であること、どこかで聞いたことあるような歌声の希砂未竜等々どこか昭和東映ヒーローのエッセンスが多分に盛り込まれており、シンプルに格好いい王道戦隊です。