アラニス・モリセット / Alanis Morissette

アラニス・モリセット / Alanis Morissetteのレビュー・評価・感想

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アラニス・モリセット / Alanis Morissette
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むき出しの心で歌う個性派な音楽

自分の気持ちに正直に音楽を発信することを怖れない、個性派な女性シンガーソングライター。

カナダ出身のアラニス・モリセットは、もともとはカナダにてダンスミュージックを根底としたアルバムをリリースしていました。
しかし、1995年にマドンナの主宰するレーベルから出した『Jagged Little Pill』が世界的にヒット。
音楽性もオルタナティブ・ロックにシフトチェンジし、大成功します。
彼女の赤裸々に思いの丈を吐き出すリリックの世界は、オルタナなサウンドにぴったり。
自分自身を受け入れ、人生への行き詰まりを打開する強さが感じられます。

そして続く『Supposed Former Infatuation Junky』でも快進撃を続けます。
もとのダンスミュージックへの回帰も見られ、サウンドの幅が広がり、オリジナリティが爆発。
ヨガに執心し、インドにまで渡ったアラニスの、精神の解放が歌われています。

さらに『Under Rug Swept』ではセルフプロデュースにも挑戦。
自身の内面を見つめた、内省的な歌詞が印象的です。
『Jagged Little Pill』からのヒットシングル『You Oughta Know』でこき下ろしていた元恋人への辛い想いが、もう一度、このアルバムの中の『Hands Clean』で歌にされています。
怒りに燃えていた『You Oughta Know』と比較すると、今回はトラウマを癒して脱け出そうとしているかのよう。
この曲のビデオは、くすぶっていた過去の思い出を音楽に昇華したことで、自信を持ち、前を向いていけるようになったことを描いた素晴らしいものです。
ビデオの最後では、落ち着いた表情のアラニスが、偶然出くわした元彼から清々しく去っていく様子が収められています。

自身の心に起こったことを曲にすることで、聴く人の辛い体験を乗り越える手助けとなるアラニス・モリセットの音楽。
それは時代や世代を超えて人々を励まし続けます。