リバーズ・エッジ

リバーズ・エッジのレビュー・評価・感想

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リバーズ・エッジ
9

映画を観ているような感覚になるコミック

歪んだ若者たちの何とも言えない青春が描かれています。読んだ後は、映画を観たときのような感慨深い気持ちになる作品です。

舞台は主人公のハルナが通う都内の高校。ハルナは「何でもいい人」と言われてしまうように、特に情熱があるわけでもなく、つきあっている彼氏に対しても特別な感情があるようには見えず、むしろ面倒に思っているようなフシがあります。そんなハルナに対して躍起になる彼氏の観音崎は素行が悪い人物で、問題を起こします。しかし、それでもやはりハルナにとっては、それも現実味のないもので、何か感情を強く動かされるものではないのです。

一方で、やはり同じようにつきあっている相手をそれほど愛せない少年、山田くんに対しては、ハルナは特別な感情を抱きます。そのハルナの心情がキーポイントとなっているのですが、明確な意志のようなものはなく、あくまで状況に対応するだけ。そして、山田くんとハルナを取り巻く周囲の人々は問題のある行動をとるようになっていき、ストーリーはクライマックスを迎えて静かに終わっていきます。

わかりやすく伝えたいことがある作品だとは思いませんが、哲学的な雰囲気があり、何となく「生きる」ということに思いを馳せるような漫画です。若者たちの壊れてしまった日常を、肯定するわけでもなく、批難するわけでもなく、生命として描いているように思います。その決して裁かない作者の視点が、この作品の芸術性を高めているのではないでしょうか。