少年は残酷な弓を射る / We Need to Talk About Kevin

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少年は残酷な弓を射る / We Need to Talk About Kevinのレビュー・評価・感想

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少年は残酷な弓を射る / We Need to Talk About Kevin
8

美少年の執着したものとは……

母親の視点で始まる。家族の話です。
物語の核となるのは、母親と、息子のケヴィンの関係性。
母親の視点で進む映画なのですが、息子のケヴィンはなぜか母親に懐かない。
それどころか、母親に向けてだけ反発を続けて、母親はケヴィンへの接し方が解らなくなってしまう。
物語のドロドロした質感と、ケヴィンの美しさにとても引き込まれます。

※ここからネタバレ。自分なりの考察です※
結果、ケヴィンは美しく成長をして、母親以外の家族とクラスメイトを殺します。
ケヴィンは警察に連行される時、母親を見て笑う。
彼は自分の中にある残酷性から殺人を犯したのではなく、全て母親に対する執着と当てつけからの行動なのでしょう。
自分が家族を殺し、稀代の殺人鬼になる。それを母親に受けとめさせたかった。ある意味究極の愛情を求めたのです。
物語の最後で、母親は刑務所にケヴィンに面会をする。そこには刑務所内でイジメを受けて傷付いたケヴィンがいた。
刑務所内の生活で、少なからずとも自分のした事に後悔を覚えているようだ。
母親がどうして事件について、「どうしてあんなことをしたの?」と問う。
ケヴィンは「理由はあったような気がしたけど、もう解らない」と答える。
その瞬間、答えは映画を見る視聴者に委ねられた。
僕はこう思う。母親への執着から解放されて、少年は怪物から普通の人間になったのだと。
最後に、この物語のタイトル。
少年は残酷な弓を射る。
その名の通り、ケヴィンは幼少期に読み聞かせてくれたロビンフッドの話に興味を持った。
それからアーチェリーを始め、父親に買ってもらった弓矢で父親、妹、クラスメイトを惨殺する。
僕も、幼少期に読み聞かせてもらった物語は心の奥底に基盤となって残っている。きっと誰しもそんな物語はあると思う。
それが狂気を孕んだ思考に繋がらないことを祈っている。