ある設計士の忌録

『ある設計士の忌録』とは鯛夢によるホラー漫画作品。『HONKOWA』(朝日新聞出版)によせられる読者体験を漫画化したものがベースになっている。
町の工務店を営む男(「私」)。「私」には霊感があり、普通の人には見えざるものを見ることができ、普通の人には感じざるものを感じることができる。多くの仕事を通じて様々な怪異に遭遇する「私」。「私」の手には負えない怪異に遭遇したとき、とある「先生」に怪異の解決を依頼する。
一話完結となっており、物語の主人公であり語り手である「私」が遭遇する怪異を、類いまれな霊的能力を持つ「先生」が解決するものである。
「先生」の本業は建築設計士であるが、土地にかけられた呪詛や因縁を祓う顔を持つ。またエピソードによっては福の神を降ろしたり、ときには宗教団体(作中の時点で解散済み)の拠点となる施設の設計を手がけるなど、なにかと謎の多い人物。「私」とは、ある仕事を通して出会った。
フジテレビ系列「ほんとにあった怖い話」でいくつかのエピソードが実写化されている。『HONKOWA』の読者体験が、作品化を手がけた漫画家ごとに単行本になることはあるが、同一の人物の体験が単行本化することは珍しい。

ある設計士の忌録のレビュー・評価・感想

ある設計士の忌録
10

どこまで本当分からないリアルさ

ホラー体験を集めた作品よりは、霊媒師が除霊する話が好きです。この作品はその1つで、霊媒師として仕事をしているのではなく、設計士という本業の傍らそういった仕事をしている、というところがリアルで面白いなと感じました。実際、リアルで知ってる霊媒師さんの何人かは、専業で霊媒師の仕事をしているというよりかは、本業が別にある方が多かったです。そのため、より「本当の話っぽいな」と感じました。
その場にいるだけで場を浄化してしまう巫女の血筋である女性キャラクターがいますが、本当に実在してるなら凄いなーと思いながら読んでます。設計士の先生は凄腕の能力者なので、神卸しや祟りなども難なくこなしてしまいます。そんな先生でさえ歯がたたなかった疫神という話では、先生レベルの霊能者が何人集まっても抑えられなかった神様の祟りを、一瞬にしてこの女性キャラクターが納めてしまいました。また、ヤクザ関係とも仕事をすることがあるらしく、そのアングラ具合もどうやって避けているのか気になるところです。先生は物凄くお金にがめついですが、その筋の方の依頼は基本受けないそうです。でも、その筋と気づけず仕事を受けてしまった工場の浄化の話は、ヤクザはやっぱり恐ろしいと思わせる話でした。幽霊だけでなく、ヒトコワも入っているホラー作品です。