LION/ライオン 〜25年目のただいま〜

『LION/ライオン 〜25年目のただいま〜』は、2016年に公開された、アメリカ合衆国とイギリスの合作映画である。原作はサル―・ブライアリーのノンフィクションストーリー「25年目のただいま」で、出演はデーヴ・パテル、ルーニー・マーラ、ニコール・キッドマン、デヴィット・ヴェナムなどである。2017年に日本でも公開された。2017年のアカデミー賞では6部門にノミネートされた。
ストーリーのテーマは、「迷った距離1万キロ、探した時間25年、道案内はGoogle Earth」。内容インドの片田舎に住む5歳のサル―が兄とはぐれてしまうところから始まり、オーストラリアの夫婦に引き取られ、青年期を過ごす。その後、幼いころの記憶を元に自身の生まれた故郷をGoogle Earthを使って探すというものである。撮影はインドのコルカタから始まり、オーストラリアのメルボルンにまで及んだ。

LION/ライオン 〜25年目のただいま〜のレビュー・評価・感想

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LION/ライオン 〜25年目のただいま〜
10

家族の不変の愛

この映画はインドとオーストラリアにおいて実際に起きた奇跡の出来事を題材にしています。
インドに住む幼いサルーは、兄のグドゥと一緒に夜の仕事に出かけた最中、一人で見知らぬ列車に乗りこんでそのまま居眠りをしてしまいました。彼を乗せた列車は故郷から遠く離れたカルカッタまで行き、サルーは正真正銘の迷子になります。
サルーの故郷とカルカッタでは使っている言葉が異なるため、周囲の大人に助けを求めることもできません。警察官に母の名前を聞かれたサルーはただ一言「ママ」とだけ答えました。幼すぎるため、まだ母親の名前を言うことができなかったのです。
日本では方言が違うといっても意思疎通ができる範囲なので、たとえ北海道で育った人が九州で迷子になったとしてもそれほど言葉の壁はありません。ただ、広大な土地を持つインドは地域によって話されている言葉が異なるために意思疎通が困難な場合があるそうで、このことがサルーが迷子になる決定打になってしまいました。
また、インドでは年間5万人の子どもたちの行方が分からなくなっているほど子どもにとっては生きるのが難しい国です。サルーが収容された孤児院も非常に劣悪で、虐待や性的暴行が横行しており、日本では考えられないほどの暴力が日常的に起きます。映画ではその辺もさりげなく示唆されています。
孤児院から脱出するため、サルーはオーストラリアの夫婦に養子として引きとられることを決意しました。しかし大人になった後も彼は、自分の「本当の故郷」を探し続けます。グーグルアースで。
「本当の故郷」を探せば探すほど養父母を裏切っているという罪悪感に苛まれていくサル-。しかし、ついに彼は幼いころの記憶を手繰り寄せて故郷を見つけることに成功したのです。また、養父母からの本当の愛に気が付き、その愛情を一身に受け止めます。
さて、この映画には一度もライオンが登場しません。ではどうして映画のタイトルは「ライオン」なのでしょう。それはラストに分かります。最後のたった5秒間のラストシーンのためだけにこの映画を見る価値があるでしょう。

LION/ライオン 〜25年目のただいま〜
9

泣ける

映画を見る前は、大人になった主人公が、過去を回想しながら、本当の親を探す、みたいな話かなと思っていましたが、想像以上に主人公の半生がしっかりと描かれており、ただ親を探すだけの映画ではありませんでした。育ての親や兄弟への思い、恋人との関係とかいろいろなことが描かれていて、とても深い話でした。
主人公が、本当の家族を探したいという気持ちもよく分かりますし、そのことを育ての親に後ろめたくて言えないというのもリアルな話だなと思いました。育ての母親がそんな心の狭い人ではないのは分かってはいたとは思いますが、それでも傷つけてはしまうだろうと主人公は思ったのだと思います。育ての親についに告白するところでの母親の言葉には泣けてくるし、本当の家族と出会うところはもう号泣物でした。主人公ももちろん嬉しかったと思いますが、本当のお母さんの気持ちを考えると、迷子になって、そのまま25年も息子に会えなかったなんて、どれだけ辛かっただろうと思います。そして、最後、ライオンの意味が分かって、さらに号泣です。久しぶりにこんなに泣ける映画に出会いました。
主人公も素直でいい青年ですし、育ての親も良い人たちだし、元恋人も別れてからも彼のことを気にかけててすごく良い子です。
見ていて、すごく暖かい気持ちになれる映画です。