家族の不変の愛
この映画はインドとオーストラリアにおいて実際に起きた奇跡の出来事を題材にしています。
インドに住む幼いサルーは、兄のグドゥと一緒に夜の仕事に出かけた最中、一人で見知らぬ列車に乗りこんでそのまま居眠りをしてしまいました。彼を乗せた列車は故郷から遠く離れたカルカッタまで行き、サルーは正真正銘の迷子になります。
サルーの故郷とカルカッタでは使っている言葉が異なるため、周囲の大人に助けを求めることもできません。警察官に母の名前を聞かれたサルーはただ一言「ママ」とだけ答えました。幼すぎるため、まだ母親の名前を言うことができなかったのです。
日本では方言が違うといっても意思疎通ができる範囲なので、たとえ北海道で育った人が九州で迷子になったとしてもそれほど言葉の壁はありません。ただ、広大な土地を持つインドは地域によって話されている言葉が異なるために意思疎通が困難な場合があるそうで、このことがサルーが迷子になる決定打になってしまいました。
また、インドでは年間5万人の子どもたちの行方が分からなくなっているほど子どもにとっては生きるのが難しい国です。サルーが収容された孤児院も非常に劣悪で、虐待や性的暴行が横行しており、日本では考えられないほどの暴力が日常的に起きます。映画ではその辺もさりげなく示唆されています。
孤児院から脱出するため、サルーはオーストラリアの夫婦に養子として引きとられることを決意しました。しかし大人になった後も彼は、自分の「本当の故郷」を探し続けます。グーグルアースで。
「本当の故郷」を探せば探すほど養父母を裏切っているという罪悪感に苛まれていくサル-。しかし、ついに彼は幼いころの記憶を手繰り寄せて故郷を見つけることに成功したのです。また、養父母からの本当の愛に気が付き、その愛情を一身に受け止めます。
さて、この映画には一度もライオンが登場しません。ではどうして映画のタイトルは「ライオン」なのでしょう。それはラストに分かります。最後のたった5秒間のラストシーンのためだけにこの映画を見る価値があるでしょう。