ディーパンの闘い

ディーパンの闘いのレビュー・評価・感想

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ディーパンの闘い
9

戦場から脱出出来た先に

現代社会で日常生活を送っているとテレビでは流れるが我が生活の多忙さを理由に目を背けたい問題に貧富の差や難民、薬物の問題等があります。いずれも一般日本人には程遠い話です。この映画の主人公の出身地はスリランカです。日本からはるかに遠いこの国では内戦が何十年も続いていました。主人公も武装勢力の一人でしたが戦場から脱出するため偽装結婚をして違法難民としてフランスに流れ着きます。
主人公はスリランカで家族を亡くしています。新しい家族は若い女性と少女です。借り物の家族の間には血のつながりも愛もありません。しかしフランスで主人公はようやく戦火のない穏やかな生活になるだろうと希望を持ちます。
フランスは移民が多くなり仕事の取り合いで貧富の差が激しい、あの戦場同様弱肉強食の世の中でした。誰もやらないような危険な集合住宅の管理人として働く主人公でしたが、住人の若いギャング達のトラブルにまきこまれるようになります。ギャング達も格差社会の被害者で薬物に依存しなければ生きていけません。主人公はどこに逃げても敵に囲まれる緊張感から再び新しい家族を守るために武器を取るのでした。ここも戦場だったのです。
彼は再び家族を失ってしまうのでしょうか?ラスト数分の天国の様な幸せな主人公達家族の映像は答えを教えてくれるものではありません。かすかな希望を鑑賞者に見せてくれるだけです。
この現実は世界の至る場所で実際に起きている問題です。家族と喧嘩をしつつも平穏に暮らせる事がどんなに幸せで難しい事なのか、残酷な世界を変えるために私達が出来る事は何か、主人公ディーパンの生き様から様々な事を学んで下さい。