マスタード・チョコレート

マスタード・チョコレートのレビュー・評価・感想

マスタード・チョコレート
8

コミュ障で陰鬱なように見えて自分の夢に突き進むヒロインと爽やか講師の恋

「マスタード・チョコレート」はクラスに馴染めずネタフリばかりしている陰鬱とした印象を与える女子高生の倫子に、美術大学予備校講師の矢口が恋をする物語です。
最初、「高3の夏から初めて受かりますか」と強い眼差しで聞く倫子に押されている矢口でしたが、おとなしそうに見えて居眠りをしていたり、足グセの悪い倫子から目が離せず…いつの間にかいつも目で追うようになって行きます。ただ、途中から入ってきた生徒を気にかけるようで、よく声をかけているだけではなくいつも様子を見ていて、記名がなくても倫子の作品だと分かる、などやはり特別視しているような描写にキュンとくるのです。
そして、受験が差し迫るにつれて見えてきた、彼女のフラットなように見えて垣間見える弱さ。彼女の涙に心動かされ、顔を少し赤らめて襟足をかく姿は彼の恋心を決定づけた描写だ、と個人的にキャー!となりました。また、友達関係の推移、そこで見せるようになった笑顔に「こんな笑顔するんだ」とますます惹かれるようにーー。
しかし、倫子が好きになっていたのは同じ歌手を好きな世捨て人(同じようにクラスに馴染めていなかった)男子なのです。彼とは矢口が通っていた美大の文化祭に行ったり、二人でよく話していたりしてヤキモキする姿もまたキュンとします。
とにかく恋でなかったような彼の倫子への目のかけ方が明らかに個人的な興味に移るその機微が4コマ形式でなんとも細やかに書かれていて…ヤキモチイベントや涙でグッとくるメリハリもあって、こちらもヤキモキさせられっぱなしなのです。
毎ページドキドキしながら、少しずつ進んでいく矢口の恋心、二人の進展に読む手が止まらない…!