マスタード・チョコレート

マスタード・チョコレート

『マスタード・チョコレート』とは、冬川智子による漫画作品、およびそれを原作とした実写映画作品。2010年8月から2011年10月にかけて携帯電話向けサイト「ヒトコト」で配信され、2012年にイースト・プレスから単行本化された。人と関わることが苦手で、学校でも孤独を感じながら過ごしていた高校3年生の少女・津組倫子(つぐみ)を主人公に、彼女が美術予備校で出会った人々との交流を通して、友情や恋を知り、少しずつ自分の居場所を見つけていく姿を描く。
小学4年生の頃に友人から仲間外れにされた経験をきっかけに、人との距離をうまく縮められなくなったつぐみ。しかし、美大進学を目指して通い始めた美術予備校で、講師の矢口海や同級生の浅野祐一、早川マリらと出会ったことで、それまで閉ざしていた世界が少しずつ変化していく。やがて高校卒業後に大学へ進学したつぐみは、新たな人間関係の中で友情や恋愛に悩みながらも、自分にとって心地よい場所を見つけていくことになる。
思春期から大人へ移り変わる時期特有の孤独感や、人を好きになることの戸惑い、他人との距離を測る難しさなどを、繊細な心理描写で描いた作品であり、派手な展開よりも登場人物の心の動きに重点を置いた作風が特徴。タイトルの「マスタード」と「チョコレート」は、つぐみが好きな色として作中にも登場し、単行本ではタイトルに合わせてカバーをマスタード色とチョコレート色で配色するなど、作品の世界観を意識した装丁も施された。
2011年には第15回文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞を受賞。2017年には実写映画化され、山田菜々が主人公・津組倫子を演じた。映画版では原作の世界観をもとに、武蔵野美術大学をロケ地として使用するなど、実写ならではのアレンジも加えられている。

shirt_a_のレビュー・評価・感想

マスタード・チョコレート
8

コミュ障で陰鬱なように見えて自分の夢に突き進むヒロインと爽やか講師の恋

「マスタード・チョコレート」はクラスに馴染めずネタフリばかりしている陰鬱とした印象を与える女子高生の倫子に、美術大学予備校講師の矢口が恋をする物語です。
最初、「高3の夏から初めて受かりますか」と強い眼差しで聞く倫子に押されている矢口でしたが、おとなしそうに見えて居眠りをしていたり、足グセの悪い倫子から目が離せず…いつの間にかいつも目で追うようになって行きます。ただ、途中から入ってきた生徒を気にかけるようで、よく声をかけているだけではなくいつも様子を見ていて、記名がなくても倫子の作品だと分かる、などやはり特別視しているような描写にキュンとくるのです。
そして、受験が差し迫るにつれて見えてきた、彼女のフラットなように見えて垣間見える弱さ。彼女の涙に心動かされ、顔を少し赤らめて襟足をかく姿は彼の恋心を決定づけた描写だ、と個人的にキャー!となりました。また、友達関係の推移、そこで見せるようになった笑顔に「こんな笑顔するんだ」とますます惹かれるようにーー。
しかし、倫子が好きになっていたのは同じ歌手を好きな世捨て人(同じようにクラスに馴染めていなかった)男子なのです。彼とは矢口が通っていた美大の文化祭に行ったり、二人でよく話していたりしてヤキモキする姿もまたキュンとします。
とにかく恋でなかったような彼の倫子への目のかけ方が明らかに個人的な興味に移るその機微が4コマ形式でなんとも細やかに書かれていて…ヤキモチイベントや涙でグッとくるメリハリもあって、こちらもヤキモキさせられっぱなしなのです。
毎ページドキドキしながら、少しずつ進んでいく矢口の恋心、二人の進展に読む手が止まらない…!