ラストエンペラー

ラストエンペラーのレビュー・評価・感想

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ラストエンペラー
10

芸術的な歴史大作

『シェルタリング・スカイ』、『リトル・ブッダ』と並んで、巨匠ベルナルド・ベルトルッチ監督のアジア3部作と呼ばれる作品の中の一つとなっています。中国清朝最後の皇帝・溥儀の激動の一生を描き、1987年度のアカデミー賞で9部門を受賞し、音楽を担当した坂本龍一も作曲賞を受賞しました。

この作品で有名な場面は、主人公の溥儀が幼いながらに皇帝となったときの即位式の場面です。まだ赤ちゃんと言ってもいいような小さな溥儀が鮮やかな黄色の幕をくぐり抜けると、段上から見下ろす先に広がっていたのは膨大な数の臣下達が整列する姿でした。色とりどりの着物を着た臣下達が一斉に頭を下げる様子は圧巻で、ハッと息を飲む素晴らしさです。この色使いの美しいドラマチックなシーンは映画史に残る名場面と言われています。

しかし溥儀のそんな輝かしい栄光は長くは続かず、名ばかりの皇帝となって城の中だけで生活することを強いられるようなります。その後、城から出されたのちも、時代は第二次世界対戦を控えており、その歴史の波に揉まれていくこととなるのです。ひとりの人間としての類い稀なる人生に驚くと共に、歴史を目の当たりにして厳粛な気分になる映画です。