百億の昼と千億の夜

百億の昼と千億の夜のレビュー・評価・感想

New Review
百億の昼と千億の夜
9

日本が誇れるSF漫画の金字塔(主役は神々!)/映画マトリックスの下地にもなっているのでは?

原作は光瀬龍のSF小説で、それを萩尾望都が漫画化した作品です。

時間旅行、太古のユートピア、神々の世界、荒廃した未来(いわゆるディストピア)、宇宙…など壮大なスケールの物語!

しかも主役のモデルは哲学者プラトン、シッダールタ(釈迦)、阿修羅王、イスカリオテのユダ(裏切り者のユダ)など胸躍る面々です。ちなみにイエスキリストが敵側というすごい設定です。

それぞれの「永遠に続くかと思われるような孤独の旅」や、それに付随する小さなエピソードでたびたび感動して泣けるのですが、衝撃だったのは近未来の描写です。

人類はカプセルのようなもののなかで眠り続け、夢を見ています。そうです、マトリックスのあの世界観です。「これマトリックスだ!」と思いました。マトリックスはもともとジャパンカルチャーから影響を受けているようなので、確実にこの作品もその構想の下地になっているのではと思います。

そんなワクワクした発見もありつつ、深い悲しみやテーマに色々と考えさせられつつ、物語は進んでいきます。終わりへと向かって…。

あれはバッドエンドともハッピーエンドとも何とも言えませんが、この壮大な作品にふさわしい孤独で美しい終わり方であったと思います。

SFジャンルが得意でない人でも読みやすいですし、1冊で完結しているのでぜひたくさんの人に読んでいただきたい名作です。