大豆田とわ子と三人の元夫 / まめ夫

『大豆田とわ子と三人の元夫』とは、フジテレビ系火曜日21時台にて2021年に春クール(4月〜6月)放送されていた、坂元裕二オリジナル脚本のドラマである。主演の大豆田とわ子役に松たか子、元夫3人(田中八作・佐藤鹿太郎・中村慎森)役を順に松田龍平、 東京03の角田晃広、 岡田将生、そのほか友人役として市川実日子やオダギリジョーが抜擢されるなど、錚々たるキャストで制作された。また、ナレーションとして伊藤沙莉が声のみ登場し話題となった。ストーリーは第1章、第2章で構成されており、登場人物ひとりひとりにフォーカスをあてたストーリーはどれも、コメディカルで珍しくもあり、身近に感じる設定で人間味溢れるものになっている。その反面「別れ」など人が避けては通れない悲しみの部分も描いており、脚本を担当した坂元氏によれば、『コロナ禍の環境で誰にも会えず1人で亡くなっていくご高齢の方のニュースを見て、残された人間の背中を押せるようなドラマを作りたいという思いがありました。』と述べている。そうした想いもあり、この作品は放送終了後も見逃し配信サービスでも多く視聴され、第59回(2021年度)ギャラクシー賞テレビ部門の優秀賞を受賞している。

大豆田とわ子と三人の元夫 / まめ夫のレビュー・評価・感想

大豆田とわ子と三人の元夫 / まめ夫
9

1人で生きていけるけれど、誰かに寄りかかりたい女性のドラマ

主人公の大豆田とわ子は中学生の娘の唄と2人暮らしで、デザイン系建設会社「しろくまハウジング」の社長。仕事はできるがプライベートはなにかとうまくいかず、気づいたら3度も離婚していた。
それでも大親友のかごめや家族に支えられ忙しく日々を送っていたが、ある日母が病気で亡くなってしまう。遺品を整理していく中で母が使っていたメールソフトの解除にパスワードが必要だと知ったとわ子は、手掛かりを探そうと3人の元夫たちに連絡を始める。元夫たちはとわ子に未練があるようで、なにかと理由をつけてはとわ子に会いに来るようになる。
いつもいがみ合っている彼らだが少しずつ距離を縮めていき、とわ子を振り向かせようと3人で力を合わせたり、各々がピンチの時には互いに支えうようになっていく。
寂しがり屋でお人よしのとわ子は、そんな彼らにうんざりした様子を見せながらも彼らのペースに巻き込まれていく。そしてそれぞれと結婚しているときは見えなかった真実や良さを知り、彼らと接する中で様々な考え方を知ったとわ子は、社長の立場での部下との関わり方や娘である唄との距離感も変化していくことになる。
また、とわ子自身も社長業を通じて新たな出会いを経験したり大親友との別れを経て、人生に対する考え方が変わっていく。

このドラマは他のドラマと比較し、大きく展開が動く描写は少ないがその分登場人物各々の繊細な心情変化に注目できるドラマであると感じる。またインパクトは小さいが、ジーンと胸を打つ名言が散りばめられており、見どころの1つであると思う。
とわ子は仕事も順調で1人でなんでもこなしてしまうように見えるが、実はさみしがり屋で誰かと支えあって生きていくことを望んでいる女性である。しかし場面は関係なく、誰が相手でも自分の譲れないところは譲らない芯の強い女性である点が彼女の長所であり、短所でもあるように感じた。
仕事面では、女性の社会進出が進んでいる現代では憧れる人も多いのではないかと感じる。

ドラマを見ていると彼女の人生は悲しい別れの方が多いように感じてしまうが、他の登場人物によって日常の小さな幸せや出会いが引き立つとともに、素直なとわ子もそれらを受け入れ平和な日常が続いていくことを想像させるドラマであるように感じた。