龍狼伝

龍狼伝のレビュー・評価・感想

龍狼伝
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序盤の物語紹介

この漫画は三国志演義の異色な物語で、中学生の主人公 志狼は現代の中国の修学旅行中に幼馴染(ヒロイン)の真澄と共に龍に飲み込まれ古代中国の三国志の世界にタイムスリップします。タイムスリップ先は三国志の戦場真っただ中で、劉備軍と曹操軍が争う荊州の地でした。そこで志狼は劉備軍の参謀の徐庶と蓮花(レンファ)に出会い、けがの負った徐庶の代わりの参謀として劉備軍に加わります。(この時点で演義(三国志演義の略名)の話から離れます。演義では徐庶は母親を人質に取られて曹操軍に降ります、亡くなったりはしないのです)ここで演義を多少知っている志狼は徐庶が準備していた火計を利用して曹操軍を一度退けて劉備軍の信用を得ます。その後、演義通りに三顧の礼で迎えた諸葛孔明の知略で更に曹操軍を倒しますが、大軍の前には敵にならずで長坂坡(ちょうはんは)~漢津(かんしん)へ敗走。この長坂坡で趙雲子龍の阿斗(あと、劉備の息子、次代の蜀の君主劉禅の幼名、現代ではバカを示す慣用句)を救出します。敗走中の劉備軍から逆走して1騎で曹操軍の大軍に入り、阿斗を探し、助けます。劉備軍逃走の時間稼ぎで殿(しんがり、敵の進軍を止める為、最後尾で敵と戦う部隊)を務めた志狼らに志狼のライバル、司馬仲達率いる虎豹騎が襲い掛かります。劉備軍の後ろに付いている劉備を慕う大勢の民の命が奪われる悲劇を志狼は迎えます。その後、夏口(かこう)についた劉備軍は反撃の糸口として、更に南に割拠している孫権軍(呉)に同盟を求めます。強大、大軍の曹操軍の前に怖気ついてる孫権軍重臣に対して、志狼と諸葛孔明は説得を成功させ開戦へ。演義でもここは諸葛孔明が一人で呉の重臣魯粛(ろしゅく)の紹介で孫権軍に向かい、曹操軍との戦争に否定的な重臣たちを舌戦でひっくり返し、開戦へと向かわせます。この開戦こそ、かの有名な”赤壁の戦い”につながります。水軍に不慣れな曹操軍に対して、水軍での戦争で国を大きくしたと言っても過言ではない孫権軍。兵数は曹操軍10万人対孫権・劉備連合軍の約3万人。長江で両軍がさえぎられているからこそのバランス。ここで龍狼伝に戻ると、志狼は諸葛孔明に並ぶとも言われる龐統士元(ほうとうしげん)の協力を得られます。ただし、龐統は曹操軍に在籍し、水軍に不慣れな曹操軍に助言を行います。曹操軍は風土的な疫病でかなりの兵数を減らしていて、更に水に慣れていない曹操軍は長江での船酔いで大いなる戦力ダウンに悩んでいた。そこで水に浮かぶ船をつなげて水揺れを最小限にする連環の計を曹操に提言。曹操は龐統の提言に火計の恐怖を感じ取ります。が、この”赤壁の戦い”の時期では曹操軍側から孫権軍に流れる風が吹いている事を知っているので、延焼で火計を孫権軍は採用できない。だから、連環の計を採用します。更に深読みすると、ここでの龐統は赤壁の戦い後、どちらの陣営にも加われるように考えていたと思います。連環の計で曹操軍が孫権軍に勝利すれば、そのまま功績を称えられ、逆に孫権軍から曹操軍に逆風が吹くならば、火計で孫権軍が勝利し、連環の計で協力した龐統は劉備軍に参加する。龍狼伝でも演義でも赤壁の戦いは孫権・劉備連合軍の勝利です。偏西風という現代の気候の知識を古代に知っていた諸葛孔明は祭壇で祈祷して発生させたようにみせた逆風(偏西風)で、火計が成功し勝利。曹操軍敗走直後に曹操軍の臣下の司馬仲達、虎豹騎が曹操軍を裏切り、曹操と志狼に牙をむきます。志狼たちの活躍で曹操軍は北へ敗走し、逃した領土(南荊州)の大半は劉備軍が占拠します。序盤の大一番の”赤壁の戦い”、ここまでを紹介しました。この後も志狼らの活躍に胸が躍りますが、そちらは漫画に譲ります。