52ヘルツのクジラたち

52ヘルツのクジラたちのレビュー・評価・感想

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52ヘルツのクジラたち
8

本屋大賞受賞作品【52ヘルツのクジラたち】

大切な人の言葉に、あなたは向き合えていますか。
他のクジラは聞き取れない高い周波数で鳴く世界で一頭のクジラ。その孤独なクジラのように生きる主人公の女性貴瑚と、ムシのように扱われる少年が出会うお話です。
この作品は、町田そのこさんの作品で、本屋大賞も受賞しました。
この作品の鍵を握るのは何といっても登場人物たちの言葉です。私たちはいつも何不自由なく会話していると思っていませんか。聞き取れていると勘違いしていませんか。言葉は、どこまで社会が発展し、科学技術が向上しようとも、祈りです。どんなに大切な人の言葉も、すべてを受けることはできない。けれどそんな孤独と向き合い、乗り越えることはできます。人間は、52ヘルツのクジラのように届いているのか届いていないのかわからずとも祈り続ける、そんな孤独で優しい存在だとこの作品は教えてくれます。
またこの作品は、DVやネグレクト、ジェンダーなどの現代の社会問題を題材としており、時代とともに変化する孤独にあなたは何をすることができるのか。52ヘルツのクジラから発信される強いメッセージにあなたも心動かされます。ちりばめられた小さな小さな祈りに気づけずに傷つき傷つけ、それでも祈る主人公・貴瑚の言葉が、あなたにも届きますように。