52ヘルツのクジラたち

52ヘルツのクジラたち

『52ヘルツのクジラたち』とは、町田そのこによる日本の長編小説、およびそれを原作とした実写映画作品である。小説版は作者にとって4作目にして初の長編小説として中央公論新社より2020年4月21日に刊行された。タイトルは、他のクジラには聞き取れない高い周波数で鳴き、懸命に歌っても仲間に届かないことから世界でもっとも孤独なクジラと呼ばれる52ヘルツの鯨に由来している。
作中では児童虐待、家庭内DV、介護、トランスジェンダー、毒親、家族の不理解といった様々な社会的問題が取り扱われている。刊行前から「読書メーター」の単行本部門週間ランキングで1位を獲得するなど注目を集め、のちに「読書メーター オブ・ザ・イヤー2020」や『王様のブランチ』のBOOK大賞2020で1位に輝いたほか、ダ・ヴィンチ BOOK OF THE YEAR 2020の小説部門で4位にランクインした。2021年には365.5点を獲得して第18回本屋大賞を受賞している。
過去の出来事を断ち切って東京から大分の海辺の町へと移住してきた主人公の三島貴瑚(みしま きこ)が、移住先で周囲から虐待を受けている13歳の少年と出会い、自身のかつての境遇を重ね合わせた貴瑚が「聞き逃した声に対する贖罪」として少年を救い出そうと試みる物語である。
映画版は成島出監督、杉咲花主演で2024年3月1日に公開された。

5iyu-na78のレビュー・評価・感想

52ヘルツのクジラたち
10

これぞ現代版人生賛歌

過去の凄惨な経験から離島に移住したヒロインが虐待を受けた少年を保護し、自らの過去と向き合いながら彼と今を生きていくまでを描いた作品です。
本作はLGBTや児童虐待、ヤングケアラーなど多種多様な現代社会の問題を取り扱っております。私が感心したのはそれだけの情報量をしっかりまとめ、全ての事象に必然性を持たせていた点です。
作品中、キャラクターに感じた言動や仕草の違和感もしっかり回収されていますし、なぜこのキャスティングになったのかと、細かい部分までこだわり抜かれた至極の一作でした。
特筆すべきは、主演の杉咲花さんの演技力です。感情の機微が非常に上手く表現されていて、鑑賞中常に感情移入を誘う演技でした。まさに文字通り、憑依型女優と彼女の事を賞賛したく思います。
また前述の通り、多種多様な問題を取り扱う作品とあって、観た人によってどの部分が一番感情移入できるかという点も別れてるのではないかと推測します。
私は何より、彼女に辛いことが起こっていたとしても、きっと誰かが助けてくれると実感しているシーン、そして彼女自身が誰かを助けることを決意したシーンがグッときました。
ラストに流れるSaucy Dogの主題歌も作品を彩ります。心の叫びを優しいメロディが包んでくれる一曲になっているのでこちらも是非必聴です。
長くなりましたが、私の中では邦画ナンバーワン作品でした!