岩元先輩ノ推薦

岩元先輩ノ推薦

『岩元先輩ノ推薦』とは、椎橋寛による伝奇ロマン漫画。2021年3月号から『ウルトラジャンプ』にて連載され、『ぬらりひょんの孫』を描いた椎橋の作品として注目を集めた。物語の舞台は、明治時代である1910年代の日本。陸軍直属・栖鳳中学に通う岩元胡堂が、軍の訓令により全国各地で起こる超常現象を調査し、軍事利用可能な異能者を学園に推薦し、仲間として共に敵国・英国の異能者たちとの対戦に臨む様子が描かれている。美しい絵柄と悲哀やゾッとする怖さがあるストーリーが魅力である。

岩元先輩ノ推薦のレビュー・評価・感想

岩元先輩ノ推薦
10

美麗な筆で描かれる怪奇宿す少年たちの奇譚、ここに開幕!

ジャンプで『ぬらりひょんの孫』を連載していた椎橋先生の新作です。
舞台は1910年代。超常現象を調査する岩元という少年を主人公に据えた奇譚となっている今作はまさに、作者の得意分野ど真ん中の作風そのもの。青年誌での連載ということも手伝って、より怪しげでより陰の濃い、奇怪な世界に仕上がっています。
といっても、ただ不気味なだけの話ではありません。
主人公・岩元が信念を貫く姿はもちろんのこと、コミカルさもある個性豊かな「後輩」たちが非常に魅力的に描かれている為、明暗のバランスがしっかりとれた読み心地のいい作品といえます。
ストーリー自体は各地の超常現象のもとを訪れた岩元がその怪奇を解き、蒐集するシンプルな構成となっていますが、さすがタイトルで既に「先輩」と敬称をつけられているだけはある見事な岩元の主人公ぶりによって、話がばらけることなくしっかり一つの物語としてとらえることができるようになっています。
基本的に一話完結ですので、怪奇もの初心者や長編を読むのが苦手という方でも比較的読みやすいのではないでしょうか。

また、美麗な筆遣いや構図の組み方も見事な、魅せ方が非常にうまい作品でもあります。
筆ペンを用いた力強く独特な線や繊細な描画により演出される「和」の雰囲気は、明治・大正時代に位置する作中の雰囲気とよくマッチしており、読み手を違和感なく作中に没入させてくれます。
手記・書簡を引用しているような演出もあるので、本当にかつてこんな人物が歴史の裏にいたのでは?という感覚も味わえますよ。