ヤクザと家族 The Family

ヤクザと家族 The Familyのレビュー・評価・感想

New Review
ヤクザと家族 The Family
8

心に残ったバッドエンド映画NO.1

この映画を一言で言うなら「残酷」です。

若いころ、自分に歯向かうものや気に入らないものは何であれ噛みつく、狂犬ような主人公・山本はある日ヤクザにも噛みついてしまいボッコボコにされます。それでも屈することなく抵抗をやめない山本は殺されそうになりますが、その心意気をヤクザの組長に気に入られ、組に入ることになります。
その後組員として実績を積みあげ幹部になるがある日、別の組との抗争で組長の命が狙われ、それを止めようとした仲間が相手の組員を殺してしまいます。
その罪を自らの意思で全てかぶり懲役に入ることになった山本。
長期にわたる懲役を経て出所し、組に戻るがそこには自分の思い描いていた組の姿はなかった。
ヤクザの取り締まりは一段と厳しくなり、筋を通すなどといった古い考えの組は淘汰され衰退していく一方。
自分のあこがれていたヤクザの人情や筋を通すような古い考えはもうなく、汚いことをして生計を立てるような組になっていた。
自分のあこがれていたものはもうないことを知り、ヤクザをやめて恋人と平穏に暮らすことを夢見るが、ヤクザをやめた後も世の中はヤクザであったということを許さない。
主人公はその現実を身をもって痛感していきます

この映画はそんな内容で、過去と現代のヤクザの事情をリアルに描いている映画です。
後半の出所後の現代のヤクザの現実を見せつけられるときの主人公の感情はとても痛ましくて見るのもつらくなってきます。
そんな哀れな主人公に感情移入して泣きそうになって、どうにか幸せになってくれとこころから願いますが、その願いはかなわず、畳みかけるように次々と痛めつけられ、最後には本当に救いようのない衝撃のバッドエンドを見せられ涙腺は崩壊します。
バッドエンド好きな僕の中でとても印象に残る素晴らしい映画でした。
裏社会系、闇金ウシジマくんなどのバッドエンドが好きな人におすすめの作品です

ヤクザと家族 The Family
9

『ヤクザと家族』

ヤクザとは、暴力で人を脅し、犯罪活動をする事で収入を得ている組織である。
だが、題名にもある通り、ヤクザは家族関係に似たものがある。組織のトップの事を「親父」・「親分」と呼び、親子・兄弟の盃を交わすというルールもある。
この映画の主人公は、綾野剛が演じる山本賢治。地元ではかなり有名なチンピラ。ある事をキッカケに、柴崎組というヤクザの組長、舘ひろし演じる柴崎博に認められ、組に入る事を勧められる。一度は断るが、柴崎に尊敬の念を抱いていき、組に入る事を決める。そこから山本のヤクザの道が始まっていく。
この映画の面白い点は、まずはヤクザとヤクザの抗争の迫力あるシーンである。
白昼堂々車で襲ってきたり、港でヒヤヒヤするような暴力シーンなどなど、現実では味わえないスリルを味わえる。
そして私が特に注目して見ていただきたいのは、時代によってヤクザという存在の捉えられ方が変遷していく点です。ヤクザはかっこいいものだ、という考え方から、暴力団対策法の制定により、『人間』として扱われなくなってしまうという真逆の考え方に変わってしまう。
その捉えられ方の変遷に、山本賢治やその仲間達が翻弄され、時代の波に乗るべきなのか、自分の志を貫くべきなのか、という葛藤を描いており、とても考えさせられる映画となっている。
他にも携帯・スマートフォンの復旧によるSNSの恐ろしさも描かれていて、見ている自分にもあり得る恐怖をリアルに味わえる作品。
自分の信念と世間の考え方の変遷、どっちを信じるべきなのか、観ている自分も主人公になったかのように考え込んでしまう作品で、中々こんな作品には出会えないだろう。この映画の結末もかなり度肝を抜かされたので、是非観てもらいたい。