イングロリアス・バスターズ

イングロリアス・バスターズのレビュー・評価・感想

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イングロリアス・バスターズ
9

ナチス占領下のフランスで独軍高官暗殺を狙う陰謀を大胆に描いた戦争映画の佳作!

『イングロリアスバスターズ』は2009年に公開された戦争映画で、監督と脚本はクエンティン・タランティーノ。
出演はブラッド・ピット、クリストフ・ヴァルツ、マイケル・ファスベンダー、ダイアン・クルーガー、イーライ・ロス、ダニエル・ブリュール、ティル・シュヴァイガー、メラニエ・ローレンです。
映画はナチドイツの指導者を暗殺する2件の陰謀を巡る、アルタナティブヒストリーを物語っています。
1件目の陰謀は、ショザンナ・ドレフェイス(ローレン)ことフランス人の若いユダヤ系の映画館主によって計画されたもの、もう一つはアル・レイン少尉(ピット)によって率いられたユダヤ系米国人兵士の一隊によってのみ最終的に実行されたプロットです。
クリストフ・ウォルツはレインのグループを追跡する任務を帯びた親衛隊大佐、ハンス・ランダとして共演しています。
映画のタイトルはイタリア人監督エンツォ・G・カステラーリのマカロニ戦争映画『The Inglorious Bastards』(1978年)からヒントを得ていますが、タランティーノの作品は同作のリメイクではありません。
タランティーノは1998年には構想を固めていましたがエンディングについて思い悩み、その代わりに『キルビル』第2部の監督を選びました。
2007年に『デスプルーフ』を監督した後で、タランティーノは『イングロリアスバスターズ』に復帰しました。
米国とドイツの共同制作で、映画のロケはフランスとドイツでおこなわれ、製作コストは7000万ドルでした。
2009年5月にカンヌ映画祭で特別先行上映され、同年夏に米国と欧州で劇場公開されました。配給はヴァインスタインカンパニーとユニバーサル映画。
『イングロリアスバスターズ』は全世界で3億2100万ドルの収益をあげてその時点まででのタランティーノの最高のヒット作になりましたが、『情け無用のジャンゴ』(2012年)、『ワンスアポンアタイムインハリウッド』(2019年)によって記録は塗り替えられました。
本作は広範な層から評価を得て、タランティーノの脚本、監督、演技が賞賛の的となりました。

イングロリアス・バスターズ
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鬼才クエンティン・タランティーノの秀作

鬼才クエンティン・タランティーノの秀作、イングロリアス・バスターズ。
第二次世界大戦のヨーロッパを舞台に、極悪非道の限りを尽くしていたナチス兵を討伐する極秘部隊「イングロリアス・バスターズ」の活躍を描いた本作品。
ユダヤ人一家を匿うフランス人酪農家を尋問する「ユダヤキラー」ことナチス兵のランダ大佐、映画館の劇場支配人でユダヤ人のショシャナが復讐の為、ナチス兵関係者をプロパガンダ映画の上映会に招待する。また、関係者が一堂に会する劇場でナチス兵を一網打尽に討伐しようと目論見、ドイツ人として潜入するバスターズ。など、本作は戦争映画でありながら、ド派手な銃撃戦などではなく、癖のある魅力的なキャラクターの様々な思惑が交錯する群像劇かつ、タランティーノ脚本特有のセリフのセンスが光るスリリングな心理戦が特徴のエンターテイメント作品となっています。
特に魅力的なキャラクターとして「ユダヤキラー」ランダ大佐を演じたクリストフ・ヴァルツの演技が素晴らしく、全編通して憎たらしいけどスマートで気品がある魅力的な悪役となっています。
また、タランティーノ監督の自由な発想や構想でフランスが舞台なのに英語圏で映画をヒットさせるため、「登場人物がいきなり英語を話す」などのハリウッド映画界の暗黙のルールを逆手に取り伏線に使うところや、歴史的史実を捻じ曲げて、フィクションだからなんでもありだろと思い切った結末にするあたりなどは痛快です。
映画界に革命的な発明をしたとも言われている作品となっています。