青くて痛くて脆い

青くて痛くて脆いのレビュー・評価・感想

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青くて痛くて脆い
10

タイトル通りの物語

まず、予告映像を見て想像していた話とは全然違う。
予告では、まるでヒロインの秋好が物理的に死んで、その恋人であった主人公の楓が秋好の死の原因を探りながら復讐していく、
というようなイメージを持たせるような映像だったが実際にはかなり違う。
まず、秋好が死んだ、というのも物理的に死んだのではなく、楓が過去に理想論を語っていた秋好はもういないと勘違いしての比喩表現に過ぎなかった。
実際はお互いのすれ違いによる人間関係の縺れについて描いた作品だったのだ。
予告を見てサスペンスや過激な復讐劇を楽しみにしていた人からしたらガッカリする映画ではあるだろう。

が、予告と全く違うという部分を加味しても最高の映画だ。
青くて痛い理想論から始まった二人の関係は、少しのすれ違いで簡単に壊れてしまうほど脆い、というまさにタイトル通りの物語。
つまらない意地やプライドで自分に正直になれず、それが原因ですれ違いが起き、
関係が崩れてしまうというのは現実でもありえそうなことだなと、少し恐怖を覚えるほどであった。

人のうわさや目に見える情報のみを信じることであの人はこういう人だ、最低だと決めつけてしまうところや、
ネットでの炎上の様子もとてもリアルで、ものすごく盛り上がるというわけではないが最初から最後まで飽きずに楽しむことができた。

ただ、ストーリーが少し複雑で、途中から秋好は結局生きてるの?死んでるの?とわからなくなったりもしたが、
それでもこうして面白かったと宣言できるのは終わりが良かったからだろう。
なりたい自分になるために、過去の過ちを二度と繰り返さないために変わろうとする楓の姿はもちろん、
一度最悪の関係にまで落ちてしまった秋好と向き合った時に楓が自分自身に言った「ちゃんと、傷つけ」に心を打たれた。

傷つくこと、傷つけてしまうことを恐れ過ぎず、自分の気持ちをぶつけ話し合う。
一見簡単そうに見えるそれは、本当はとても難しくてとても大事なことなんだと気付かされた映画だった。

青くて痛くて脆い
8

理想の自分とは

ちゃんと傷つけ!

青春期独特の「自分とは何か」について触れられている作品。ヒロインの秋好は外向きの、他の人も幸せになれるような理想を掲げ、主人公の楓は「こういう自分でありたい」という謂わば内向的な理想を掲げていた。どちらの理想も行動に移さねば現実は何も変わらないが、内向的な理想は現実と理想の距離が分かりやすくその分理想に届かない自分にいらつきを感じてしまうように思う。

自分のあり方に悩む時期って誰しも経験することだと思う。それに「こういう自分でありたい」「他の人にこう思われたくない」と考える時期も必ずある。個人的には理想を追い続けるのも大切だけど、ありのままの自分自身を素直に受け止める方が理想とのギャップに苦しむことはないと思う。ただ、これに気づけるのは自分の理想を追い求めているときではない。理想を諦めたときだろう。
そして、自分の考えを振り回して他者を不幸におとしめるようなことはあってはならない。当たり前に思うかも知れないが、実際大学生の楓は自分の考えを他者に押しつけて多くの人を不幸にしていた。
誰しも悩む「自分」についてや、理想と現実、青春など様々な要素の盛り込まれた作品。見終わった後、後味の悪さを感じるのは私だけじゃないはず。