志乃ちゃんは自分の名前が言えない

志乃ちゃんは自分の名前が言えないのレビュー・評価・感想

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志乃ちゃんは自分の名前が言えない
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マイナーな映画だが最高級の作品。吃音の少女と、歌うことが好きなのに音痴な少女が紡ぐひとつの物語。

最近の若手女優の中でも注目度、知名度ともに上昇中の2人がダブル主演を務めた作品です。主演の2人が後にブルーリボン賞新人賞を初め各賞を受賞するなど、コアな映画ファンの間でも話題になりました。
吃音を持つ少女・志乃役を演じるのは、2021年春に『ドラゴン桜』で早瀬菜緒役を演じ一躍話題になった南沙良さん。この映画は過去の作品ではあるものの、『ドラゴン桜』で彼女の存在を知ったという人には是が非でも見ていただきたい映画のひとつです。
そして、歌うことが好きなのに音痴な少女・かよ役に抜擢されたのは、2021年のNHK朝の連続テレビ小説『おかえりモネ』で主人公百音の妹役を務める蒔田彩珠さん。
彼女たちの演技がキャラクターに命を吹き込み、作品の中で確かに息づいているのだと感じる瞬間がいくつもあり、ひとつのドキュメンタリーを見ているような感覚に陥ってしまいます。
また、作品終盤の文化祭のシーンは、監督が最後の最後まで長いこと粘って撮った場面であることが後にインタビューで明かされていますが、このシーンはまさに圧巻です。泣きの演技が度々話題に挙げられる南沙良さんですが、この作品こそが彼女が涙を流すシーンで最も強烈かつ印象に残るのではないでしょうか。