14の夜

14の夜のレビュー・評価・感想

14の夜
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「おっぱい」という最強のモチベーション

アラサーの筆者(♂)にとって「おっぱい」は、何かを頑張るための強力なモチベーションにならない。
しかし、ある時期においては「おっぱい」のためならガムシャラに頑張れた。
そんな気持ちを思い出させてくれたのが足立紳監督の映画『14の夜』である。

映画の舞台は田舎町。1980年代の夏休みの話である。
主人公の大山は柔道部で、同じ部の竹内、岡田、多田たちと4人でつるんでいる。タイトルの「14の夜」は彼らの年齢を指している。柔道部は活動こそしているが、基本的に行なわれているのはプロレスごっこであり、ストイックな部活ではない。大山は必死に映画を撮っている映画研究部の人たちを見て、どこか中途半端な自分に引け目を感じている。
そんな中、学内にある噂が流れる。青年たちの誰もがお世話になっているエロ本界のアイドル「よくしまる今日子」が、町に唯一あるレンタルビデオ屋に来てサイン会を行うらしい。しかも24時以降に行くと、おっぱいを吸わせてくれる。そんな謎の情報が青年たちの心を刺激する。大山も最初はアホらしいと相手にしていなかったが、仲間から「よくしまるのおっぱい吸いたくねーのかよ?」と問われると、否定できなかった。
おっぱいを吸うために青年たちは門限を過ぎた21時に学校に集合する。サイン会の情報は不良たちにも伝わっており、主人公たちと学校で鉢合わせてしまう。不良たちに心霊スポットで心霊写真を撮ってこいとムチャぶりされ、主人公たちは仲間割れし、散々な目にあう。しかし、主人公の心は傷つきつつも折れず、よくしまるが待つサイン会へと向かう。サイン会後に不良たちの抗争に巻き込まれるが、主人公はそこで不良に一目置かれるようなガッツを見せる。その気迫を生んだのも、「不良の彼女のおっぱいを揉んでやる」という、おっぱいからくるモチベーションであった。

思春期を経験した男性の多くは、おっぱい由来のモチベーションの強力さを身に沁みて理解している。
ゆえに『14の夜』の作劇がバカバカしくても、そこに切実な真実味を感じることが出来るのだ。
『14の夜』は、おっぱいと夢が同義であった頃を思い出させてくれる快作であった。