スコルピオンの恋まじない

スコルピオンの恋まじないのレビュー・評価・感想

New Review
スコルピオンの恋まじない
8

深くないからいい!

ウディ・アレンの傑作ではないかもしれません。でも、傑作ではないのがこの作品の強みだと思います。
「雨の休日、予定のない夜、少し余ってしまった日常の時間を埋めたい時に、傑作では重過ぎる」、そんなわがままに付き合ってくれる作品です。
舞台は1940年代のニューヨークの保険会社です。ウディ・アレン演じる保険調査員と、社内改革のためにやってきたキャリアウーマン(ヘレン・ハント)の水と油のような関係性が、ある夜をきっかけに変わり始めます。この対立構造の分かりやすさが、とっつきにくくなくて良いんです!メインキャストの二人の立場や感情がスッと入ってきます。
そんな二人の対立に変化をもたらすきっかけは「催眠術」です。
我の強い二人の男と女が「催眠術」によって操られ、無意識の行動を繰り返します。でも、その無意識の行動を経て2人は自分の本当の意識、本当の想いに迫っていくのです。
この経過が絶妙に馬鹿馬鹿しくて最高で、ちょっと怖いんです。「自分の身に降りかかったら…」、そう考えると結構恐ろしいです。いや、すでに私たちは「催眠術」にかかって日々を過ごしてると言えなくもないのではないでしょうか?
馬鹿馬鹿しい話なのに、いつの間にか当事者意識を持ってこの作品にのめりこんでしまっています。いつの間にか、僕の心はウディ・アレンに操られてしまっているのです。
心地よく操ってくれるこの作品は、傑作ではなくとも僕にとっては名作です。