かしこくて勇気ある子ども

かしこくて勇気ある子どものレビュー・評価・感想

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かしこくて勇気ある子ども
9

これから生まれてくる全ての子どもたちへ

本作は2013年の手塚治虫文化賞新生賞を受賞した「Sunny Sunny Ann!」の作者、山本美希の4作目となる作品である。異なる背景の女性を主人公とした作品を描いてきた彼女。「かしこくて勇気ある子ども」は、これから生まれてくる我が子を想い、希望や絶望を感じながらも前に進んでいく若い夫婦の物語である。
妊娠、出産、そんな奇跡のような瞬間の積み重ね。希望に溢れていてもいいはずだ。
だがわたしたちは生きているだけで様々な困難が訪れることを知っている。「ある意見を表明した人や、何かを表現した作品に対して、極端な方法で黙らせようとする流れが強く感じられるようになって」そう作者が言うように、日々耳を塞ぎたくなるような出来事が世界中で起きている。なんて冷たく生きづらい世の中だろう。
そんな世界で、何も知らない子どもたちは幸せに生きていけるのだろうか。自分が生まれてきたこと、生きていることを誇りに思えるのだろうか。理不尽に傷つけられ虐げられることはないだろうか。
募る不安を抱えながらもわたしたちは子どもに教えてあげたい。「世界は暖かいんだよ、希望に満ちているんだよ」と。これから生まれてくる全ての子どもたちのため、誰もが生きやすくなる、そんな世界にしていかなくてはいけない。そう強く思う作品だ。