かしこくて勇気ある子ども

かしこくて勇気ある子ども

『かしこくて勇気ある子ども』とは、筑波大学芸術系助教でマンガ作家の山本美希による2020年公開の長編マンガ作品である。著者の長編作品としては『Sunny Sunny Ann!』『ハウアーユー?』以来6年ぶりとなり、2020年6月17日に単行本が発売された。本作は、マガジンハウスが運営するモードファッション誌『GINZA』のWebサイトとの共同連載企画として制作されている。
本作は、女性をテーマに世界の現実を見つめ直したものである。ストーリーは、第一子の妊娠を機に、これから生まれてくる我が子へ期待を膨らませる若い夫婦の姿から始まる。夫婦は「子どもが賢くて勇気ある子に育ちさえすれば、明るい未来が訪れる」と信じて疑わなかった。しかし、出産を目前に控えた妊娠後期、妻はある少女の身に起きた凄惨な事件を知ることになる。その事件は、少女が賢く勇気があったが故に標的とされてしまった凶行であった。この出来事を機に、夫婦が無邪気に信じていた明るい未来の前提は大きく揺らぎ、妻の心は激しく動揺する。「これから生まれてくる我が子のために、私たちは何を考え、何を伝えればいいのか」という問いを夫婦、そして読者に投げかける物語が展開される。

takafumi00803のレビュー・評価・感想

かしこくて勇気ある子ども
9

これから生まれてくる全ての子どもたちへ

本作は2013年の手塚治虫文化賞新生賞を受賞した「Sunny Sunny Ann!」の作者、山本美希の4作目となる作品である。異なる背景の女性を主人公とした作品を描いてきた彼女。「かしこくて勇気ある子ども」は、これから生まれてくる我が子を想い、希望や絶望を感じながらも前に進んでいく若い夫婦の物語である。
妊娠、出産、そんな奇跡のような瞬間の積み重ね。希望に溢れていてもいいはずだ。
だがわたしたちは生きているだけで様々な困難が訪れることを知っている。「ある意見を表明した人や、何かを表現した作品に対して、極端な方法で黙らせようとする流れが強く感じられるようになって」そう作者が言うように、日々耳を塞ぎたくなるような出来事が世界中で起きている。なんて冷たく生きづらい世の中だろう。
そんな世界で、何も知らない子どもたちは幸せに生きていけるのだろうか。自分が生まれてきたこと、生きていることを誇りに思えるのだろうか。理不尽に傷つけられ虐げられることはないだろうか。
募る不安を抱えながらもわたしたちは子どもに教えてあげたい。「世界は暖かいんだよ、希望に満ちているんだよ」と。これから生まれてくる全ての子どもたちのため、誰もが生きやすくなる、そんな世界にしていかなくてはいけない。そう強く思う作品だ。