娼婦ベロニカ

娼婦ベロニカのレビュー・評価・感想

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娼婦ベロニカ
7

いつの時代も女性は逞しい

実話ベースのおとぎ話のようなハッピーエンド!
映画の冒頭で「これは実話を基にした物語である」と説明が入るのですが、「果たしてこんなに出来た話が実話なのか」と気になり調べてみました。実際、実在のベロニカと映画では違う面が多い印象。個人的には史実に沿った彼女の人生の方が見応えがあると思うのですが、今回はあくまで彼女の名前を借りた別の物語として解釈したいと思います。

前述した通り、物語はほとんどフィクションです。もう一つ印象に残ったのは映像の美しさです。舞台が中世ヨーロッパということもあり、きらびやかなドレスを身に纏って、時には纏わないで、昼も夜も社交場に赴く高級娼婦なので、それはもう最高に美しかったです。そんな彼女のサクセスストーリーですが、まずはあらすじを。

舞台は1583年、商業都市として栄えるベネチア共和国では女性が男性の所有物のように扱われており、ベロニカは貴族出身のマルコと身分違いの恋に落ちます。「結婚は愛によって結ばれる」と信じるベロニカに、マルコは「国家のため、身分の高い娘と結婚しなくてはならない」と告げます。悲しむベロニカは母のアドバイスにより、マルコの愛人になるため、家計を支えるため、高級娼婦を目指します。詩の才能にも恵まれ、次第に人気の高級娼婦となったベロニカですが、いつしか時代は移り変わり、ペストが蔓延すると、娼婦はヘイトの対象になってしまいます。彼女も、魔女裁判にかけられるも毅然とした態度で臨み、恋人マルコの助けもあって彼女は釈放され、生涯マルコとの愛を貫きました。

母のアドバイスで娼婦になった、という点はツッコミたくもなりますが、ベロニカが自由に生きる術を手に入れた瞬間でした。この時代の女性は、愛のない結婚をして男性の所有物であるかのような人生を送ることが当たり前でしたが、彼女は自身の意思で自由に生きることを決意します。それは危険な局面であっても変わらず、彼女は自分の生き方に誇りを持っていました。現代において生き方の選択肢が増えた分、私たちは危険に晒されることもなく自由に生きることができます。しかし、それと同時に自分の選択を疑いたくなることも時にはあるのではないでしょうか。ベロニカの、危険に直面してもなお揺るがない誇りは、物事の盤面をも変える力があると実感しました。彼女の美しさ、そして逞しさにぜひ触れてみてください!